Run to Infinity

by Yota Nakamura /// フリーランス・トラベラー中村洋太の挑戦と情報発信のブログ

【自転車旅】ツール・ド・ヨーロッパ(終)真の目的

      2017/12/24

ツール・ド・ヨーロッパを終えて、何を伝えたいか。たくさんのことを感じたが、特に話したいことは2つある。

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実際に旅をして感じたこと

やっぱり、「外」に出よう。同世代の人たちに伝えたい。

ネット、テレビ、ゲーム、マンガも楽しい。ぼくも大好きだ。けど、そこでは決して味わえない体験があると、今回の旅を通して改めて感じた。

科学の発展で、世の中はずいぶん進化した。温暖化、環境破壊と騒がれているが、ぼく個人としては、このバーチャルな世界の広がりを少し危惧している。

Google mapsや Google Earthで旅行を疑似体験できてしまう。「わざわざ行かなくても、何があるかわかるよ」

それは「若者の海外旅行離れ」にも影響していると思う。でも『百聞は一見にしかず』なのだ。本当に。

生を見る、本物を見るということは、写真や映像で見る感動とは、まったく質が違うんだ。壁に触って質感を知る。想像以上に建物が大きかった。サグラダファミリアは、まるで生き物のようだった。あれは写真じゃわからない。トマト祭りもそう。人の圧力で死ぬかと思った。テレビで見るのとはまったく異なる体験だった。自分で体験したことは、一生記憶に残る。

なんでも疑似体験ができてしまうために、今の若い人に多いのは、すぐに結果を欲しがる性質。過程をすっ飛ばしている。できるだけ、疲れずに、時間をかけずに結果が欲しい。楽をしたい。

本当は、その過程こそが一番大切なものであるハズなのに。急ぎすぎじゃないだろうか。

ヨーロッパを自転車で走りたい。山手線を自転車で行ってみたい。ヒッチハイクで鹿児島まで行ってみたい。

そう言うと、こう言う人がいる。「それになんの意味があるの?」「それをやるとどうなるの?」「疲れるだけじゃない?」

理由なんて、どうだっていいじゃないか。純粋にワクワクしてこないかな。ぼくだって、「自分を成長させるために走りたい」とか、そんなことは全く考えていない。ヨーロッパを自転車で走るというのはどういう「感じ」なんだろうなぁ。多分気持ちいいんだろうなぁ。単純に知りたかっただけだ。

やる前から、「それをやることでこうこうこうなります」と論理的に説明されても、何も面白くない。続きが気になるからマンガを読むんだろう。最初からオチを知りたくないだろう。この試合は3-2でフランスが勝ちます、ではご覧ください。

そんな人生、楽しいだろうか。

生の経験は、絶対にゲームやネットでは手に入らない。自分で行くしかない。ゲームで死んだことは何回もあるだろうが、本当に死ぬかと思ったことってあるだろうか。

「あ、ガソリンがこぼれてるっ・・・」

南フランスを時速30kmで走っていて、タイヤがつるっと滑った。体が宙を浮いた。顔から叩きつけられた。倒れて、目を開けて、最初に思ったことは、「痛い。まだ生きてる」

あの時の感覚はもう二度と味わいたくないが、生きていることのありがたさを知った。

よく、「好きなことだけして生きていこうなんて甘い」と言う人がいるが、好きなことを仕事にして生きていこうという覚悟を持っている人は、純粋に格好いいと思う。「これは世界で俺だけにしかできない仕事だ」、と自負してひたすらに突き進む。そんな姿に憧れる。

バーチャルではなく、生の体験をしよう。現場へ行ってみよう。そこで何が起きているのか。データを集めてきて机の上で議論しても、本質は見えてこない。自分の経験から学んだ価値観を大切にして欲しい。人の価値観に流されないで生きて欲しい。そのためにたくさんの経験をして欲しい。良いことも悪いことも、楽しいことも辛いことも。その全てが自分を作っていく。価値観を構築させる。

こんなに便利で不自由のない国であるにも関わらず、うつ病患者、引きこもり、自殺者が何万人といる。結局、生活水準の高さは幸福度と関係がないということだ。むしろ行き過ぎた生活水準は危険を招く。今の日本人は、同じものを得たときに、より「ありがたい」、より「幸せだ」と思える心の筋肉をつける必要があると思う。そのためにも、海外に出ることは貴重な修行、トレーニングになると思う。

若い人は、ちょっと仮想の世界に浸る時間が長過ぎるんじゃないか。もっと外に出よう。普段と違う人と話そう。自転車で遠くまで行ってみよう。なんでもいいから、普段と違うことをやってみよう。もちろんそれには勇気もいる。だけど、かならず何か面白いことが待っている。失敗したって死なないんだから、何でも挑戦してみよう。

『ツール・ド・ヨーロッパ』真の目的

さあ、いよいよこれを話す時がきた。8ヶ月間、これを言うために頑張ってきた。

ぼくは日本が好きだ。

今の暗い日本を元気にしたい。自分なりの方法で何が出来るかと考えた。

『若者の海外旅行離れ』を食い止めるというのがこの旅の一つのテーマだったが、それは日本を元気にするための一つのテーマだと思ったからだ。海外を知ることは日本を知ることにもつながる。

しかし、ぼくの本当の目的は、日本を元気にすることだった。

自転車でヨーロッパを旅することで、若い人の海外旅行意欲を掻き立てられると思った。だけど、本当の目的はその裏にある。

どうしてリスクを負ってまで、スポンサーでお金を集めるという手段を取ったのか。「アルバイトでお金を貯めるには、時間が足りなかった」と今までは言ってきたが、もう一つ大きな理由がある。

ぼくは、「学生団体でもサークルでもない、たった一人の何の才能もない無名の大学生が、本気を出して行動を起こしたときに、どこまで社会や人を巻き込んで活動ができるか」ということに興味があった。

「無名の学生一人が、ここまでできる」という前例を作りたかった。ただ、それは口で言っても誰も信用してくれない。自分がモデル、つまり実験台になろうと思った。試金石だ。「自分が実際に行動で示してやろう。」この企画に、最後までモチベーションを落とさずに取り組めたのは、「学生一人が本気で限界に挑戦したとき何が生まれるか」ということを知りたかったからだ。本気でやることがテーマだったから、手は抜けなかった。

では、なぜそんなことに興味があったのか。

それは、これからの日本を作っていくのは、自分たちの世代だと思ったからだ。

「意志を持って行動すれば、これだけの活動ができるんだよ。何の才能もないぼくにできたんだから、みんなにもできるよ」ということが言いたかった。一人でこれだけ大きなことができる。若い人は何万人もいるんだ、その一人一人が夢や目標を持って行動すれば、若い人たちから日本を元気にできると思った。お互いに刺激を与え合える。相乗効果が生まれる。それで日本は活性化する。

ぼくは実験台であるから、失敗するリスクは伴う。「そんなの無理に決まってるじゃん。」「やる前からわかり切ってるじゃん。」と言われる覚悟も必要だ。

だけど、ぼく一人が批判されるだけで、全体として日本が元気になるならそれでもいい。

みんなは、リスクを負ってでも目標を持って何かに挑戦して欲しい。挑戦することそれ自体が成功であり、途中の失敗は成功への過程。全てが自分の財産になる。

ぼくは来春卒業する。学生の立場から何かを発信できるのは最後のチャンスだと思った。ぼくの思いが途切れる前に、伝えたかった。意志を受け継いで欲しい。なんでもいい、何かに挑戦してくれ。バカにされても負けるな。諦めるな。それがきっと人を動かす力になる。思わぬところから協力者が現れる。それを現に、ぼくはこの半年間で体験してきた。夢の実現に向け、ひたすら無我夢中に取り組んだ。何人もの社長とメールをする。敬語の使い方がわからず怒られたこともあった。

しかし、諦めなければ奇跡は起きる。学校の先生が、授業後にこっそり協賛してくれた。学食のおばちゃんが応援してくれた。自動車学校の教官がお金を出してくれた。3人のオリンピック選手が応援してくれた。何人もの知らない方々から応援のメールを頂いた。泣きそうになりながらダメ元で飛び込み営業したオークリーで、サングラスが貰えた。「普通じゃないことに挑戦するあなたを応援します。」と、思わぬ所から自転車を頂けた。依頼を受けて講演もした。ラジオにも出た。

忙し過ぎて、今日まで思い返す余裕もなかった。だけどまったく、奇跡のような日々だった。

旅先でも奇跡はたくさん起きた。

知らないドイツ人が協賛してくれた。世界中の友達ができた。日本が好きになったと言ってくれたフィゲラスのおばさん。バレンシアで会ったおじさんと、イタリアで再開した。自分の自転車の生みの親に会えた。

雨、風、怪我、山道、空腹、パンク、筋肉痛、眠気、責任、プレッシャー、たくさんの辛さと絶望感を味わった。正面からぶつかって、一つ一つ乗り越える度に、強くなっていく自分を感じた。不思議なことに、不自由なことを経験する度に、いかに自分が恵まれていたかを思い知らされる。全てに感謝しなくちゃいけないと思うようになった。自分が思っていた以上の経験ができた。

大人が悪い、若者が悪いとか、誰がいけないとか、責任をなすりつけるのはもうやめよう。悪い部分を探すのではなく、良い部分を見つけて褒めてあげよう。人の夢や目標を、批判するのもやめよう。心から応援してあげよう。間違っていたらその時に自分で気付けばいいんだ。足を引っ張るのではなく、背中を押してあげよう。

リスクを恐れず、意志を持って頑張っている人の芽をつぶしちゃいけない。日本を元気にするのは紛れもなくその人たちだ。そしてその応援は、いつか回りまわって自分に返ってくる。人の夢を心から応援することで、一番成長するのは自分自身なのだ。

自転車旅じゃなくていい。絵を描くでもいい。文章を書くでもいい。世界中に味噌汁のうまさを伝えるでもいい。どんなくだらないことでもいいから、本気になってやってみよう。人には人の舞台がある。これは自分にしかできないと思えるものを探そう。

そして、自分が好きなことを通して、少しだけ日本を良くできないかと考えてみてほしい。

これがこの8ヶ月間の想いです。

 

P.S. 旅から半年後、朝日新聞に掲載されました。

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 - 2010 ツール・ド・ヨーロッパ(スポンサーを集めて自転車で西ヨーロッパ一周の旅), 何度も読み返したい日記