Run to Infinity

by Yota Nakamura /// 「自転車で世界を旅する元添乗員ライター」中村洋太の挑戦と情報発信のブログ

「笑わせるな!」先生が本気で怒ったのは、最後にぼくが笑うためだった

      2017/03/03

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六本木駅から地下鉄に乗ろうとしたとき、電車から降りてきた人に見覚えがありました。

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「え!? 古谷先生ですか?」

「おぉ!洋太やないか!えらい大人になったな〜!」

5年ぶりの再会。ひと言ふた言話して別れましたが、帰りの電車で、当時の記憶が走馬灯のように蘇ってきました。

2010年6月。ヨーロッパ自転車旅の出発まで残り2ヶ月というとき、よりによってぼくはじん帯を怪我してしまいました。走ることもできず、焦りました。このままでは、西ヨーロッパ一周の旅なんて、遠い夢に終わってしまうかもしれない。

ぼくは兄の勧めで、草加の古谷施術院を訪ねました。古谷先生は、何人ものオリンピック選手や箱根駅伝のランナーたちに施術してきた先生で、陸上選手だったぼくの兄も大学時代からお世話になっていました。

「洋太、もう大学4年生か。随分大きくなったな〜。それで、今日はどうした?」

「先生、ぼくのじん帯を治してください!2ヶ月後から、西ヨーロッパを自転車で一周するんです!」

そう言った瞬間、穏やかだった先生の表情が一変しました。

「はあ? 自転車でヨーロッパ? じん帯の前にな、こんなトレーニング不足で。笑わせるな!一日100回懸垂できるか? お前の兄貴は毎日200回やってたぞ」

治療に行ったのに、本気で怒られて、随分ヘコみました。だけど、口だけと言われても仕方がなく、事実ぼくはトレーニングをほとんどしていませんでした。「なんとかなるだろう」という甘い考えでした。しかし、広いヨーロッパを自転車で旅するには、並々ならぬ体力が必要です。途中で体力に限界がきて、完走できずリタイアとなったら、本当に笑えません。

(悔しかったら、行動で言い返すしかない)

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ぼくは帰ってすぐ、100回の懸垂に挑戦しました(ぼくの部屋には鉄棒があります)。5回を20セットと考えれば、いけるだろうと思っていたら、その辛さは尋常ではありませんでした。50回を超えたあたりから、手に力が入らなくなってきて、1回ずつしか上がらなくなりました。フラフラの状態でなんとか100回をやり切ったものの、翌日はマメの痛みで、とてもじゃないけど、鉄棒を握れず。

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「今日は激痛で鉄棒を握ることすらできん笑」

と兄にメールしたところ、

「そんなもんだ!普通はそこでやめちまうんだよ。ぶらさがるのだけでもキツイから。でも、そこでやるかどうかが凡人が一流に勝てるかどうかの分かれ目なんだね。マメはそのうち血が出るけど、まあ大丈夫。死なないから(笑)」

マジか・・・と思いました。しかし、兄の言葉はもっともでした。

「もう限界」と思ったところが、本当のスタート地点。凡人と一流を分けるのは、そこで諦めるか、「いや、もうひと踏ん張りだ」と頑張るか、その差だと思いました。

そこで、自問自答しました。

「ここで諦めるのか? それとも?」

そして、ぼくは選択をしました。

翌週、再び古谷先生のもとを訪れました。また怒られるのではないかと、ビクビクしながら。

先生は、服を脱いだぼくの上半身を見て、無言でした。

そして施術を終えたとき、ぼくに封筒を渡してくれました。

「なんですか?」

封筒を開けると、中に2万円が入っていました。

「洋太、『企業協賛』は一口2万円だったよな」

「え!? なんで知ってるんですか」

「お前のブログ読んだよ。懸垂100回、頑張ったやないか。これは、『古谷施術院』からの協賛です」

「あ、ありがとうございます・・・涙」

「お前のじん帯は、出発までに俺が必ず治す」

そして企業協賛の方には、旗にメッセージを書いてもらうことにしていたので、古谷先生にも書いてもらいました。

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旅の途中、辛いことは何度もありました。体力の限界を感じたこともありました。それでも、ヨーロッパの大地を自転車で駆け抜け、ベルリンのブランデンブルク門に張られた小さなゴールテープをくぐったとき、

「笑顔で出発!笑顔でゴール!!」

という古谷先生との約束を、無事に果たすことができました。

本気で怒られたけど、すべては、最後の最後に、笑うためでした。

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「まさか、こんなところでお会いするなんて!」

「相変わらず世界を飛び回ってるか? はっはっは!」

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