Run to Infinity

by Yota Nakamura /// 中村洋太の挑戦と発信のブログ

【ツール・ド・九州 第2ステージ】弱さこそが強み

      2017/02/25

ツール・ド・九州 第2ステージ
福岡県久留米市〜熊本県熊本市
走行距離94km 

名称未設定

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朝6時半、宿のカーテンを開けてゾッとした。窓の外が、一面の雪景色だった。

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(これは、チャリで走れないのでは・・・)

っていうかメチャ雪かぶってるし!五郎丸ーーー!!

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宿で朝食を取りながら、思った。

(今日はもう諦めた方がいいのかもしれない。電車で熊本へ向かうしかないかな)

そう思いながらも、わずかな可能性を捨てたくなかった。雪をふるい落として、試しに自転車に乗ってみた。雪の中走ると、本当に滑るのだろうか。

ちょっと走ってみたら、意外なことに気付いた。

(あれ? ゆっくりなら、走れるかも)

もちろん、スピードを出せないから、80km以上先の熊本まで行くのは、さすがに無理かもしれない。でも最初から諦めて電車に乗るのは、なんか納得がいかない。ゆっくりでいいから、やるだけやってみたい。行けるところまで行ってみる。今はその先が見えていなくても、行った先で、また次の道が見えるかもしれない。

そして考えた策は、久留米と熊本を結ぶ鉄道の路線に沿って走ろう、ということ。どこかで走れなくなったら、そこで自転車を輪行袋に乗せて、電車に載せてしまえばいい。

ぼくは支度をして、8時前に出発した。いつの間にか猛吹雪になっていたが、覚悟は決めている。

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不幸中の幸いだったのは、今日が日曜日だったことだ。休日だから、車通りがほとんどなく、11時頃までは安心して走ることができた。

時速は15kmくらいしか出せない。だが、1時間走れば15km進む。1歩前に進めば、1歩分ゴールに近づく。当たり前のことだけど、自転車旅というのは、そういうことだ。とにかく前に進んでいれば、いつかはゴールに着くはずなのだ。スピードよりも、進み続けることが大切だ。

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信号待ちをしていると、その辺に住んでいるおじさんが話しかけてきた。

「自転車、大丈夫ですか?どこまで行くんですか?」

「なんとか。熊本までです」

「うひゃ〜」

こういう些細なやりとりが、好きだ。東京で自転車を漕いでいても、誰にも話しかけられない。田舎は大好きだ。

気温は-4℃と表示されていた。手袋をしていても、手の感覚が麻痺してくる。

でも、アラスカで-39℃を体験している。そのことが自信になった。これくらいの寒さはなんてことないはずだ。

それに寒さは、人を強くする。

寒さが、人を強くする。志が、人を美しくする。

吹雪は辛い。口でハアハアと息をしていると、雪がどんどん口の中に入ってきて、永遠とかき氷を食べているみたいだ。ボトルに入れたポカリスウェットは、いつの間にかシャーベットになっていた。

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それでも、不思議と嫌な気持ちはしなかった。吹っ切れて楽しくなってきた。

行けるところまで行くのだ。

いつの間にか、40km弱漕いで、大牟田駅に着いていた。

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ここまで走れば、猛吹雪の大健闘したと言えるだろう。ここから電車に乗るか、どうしようか。

いや、お腹が空いた。食べてから考えよう。駅前のラーメン屋さんに入った。

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テレビのニュースは、天気のことしかやっていなかった。羽田〜福岡の30便が欠航になったとか、雪の影響でこんな事故があったとか。実際、今日は救急車がたくさん走っていた。いたるところで、事故があったんだろう。昨日無事福岡に着いただけでも、幸運だったのだ。

こんな猛吹雪でも、ぼくはラッキーだと思えた。逆境でこそ自分の良さが光るのかもしれない。

しかし、事件が起きた。

ラーメン屋を出て、自転車にまたがると、ペダルが動かない。30分放置していた間に、すっかりブレーキが凍りついてしまっていた。しかもカチコチになっていて、太い木の枝を使っても雪を掻き出せない。

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要するに、何もしていなくてもブレーキがかかりっぱなしの状況になっているから、押して歩くのだけでも困難。それにタイヤが外せないから、このままじゃ電車にも載せられない。

そのとき閃いた。横にあったコンビニで、お湯をもらってきた。それをかけると、みるみる解けていく。コップ2杯分で、ブレーキが直った。

自転車が正常に動いただけなのに、この感動は大きかった。まるで「まだ走れるよ」と言われているような気がして、ぼくも自分に問いかけた。

「まだ、行けるか?」

「行けるよ」

「よし」

大牟田駅を、通り過ぎた。電車には乗らない。

熊本まであと45km。ここまできたら、最後まで走り切ろう!

吹雪は弱まらない。だけどぼくのスピードも弱まらなかった。無の境地になり、1km、また1kmと、淡々と自転車を漕いでいった。

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「お前は弱い」

もうひとりの自分は言ってくる。

「でも、弱い人間であればあるほど、挑戦をしたときに、多くの人に勇気を与えられる」

それが、ぼくの強みだと思っている。弱さこそが、強みだ。ぼくが頑張ることで、多くの人を励ますことができる。その事実が、ぼくの頑張りを支えてくれている。

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ラスト3km。いよいよ五郎丸の後輪ブレーキが効かなくなった。片側のブレーキだけを頼りに、ゆっくりと確実に、走った。

やがて、熊本城が見えた。

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やった、やったぞ! 最後まで走り切った!

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念願のくまモンにも会えた。

そして熊本には、「あの男」がいた。

以前、ブログで紹介した、だいちゃん!

「日本のクラフトビールの魅力を、世界に広めたい」世界一周、ユニクロ店長を経て、ビールの道へ 袴田大輔さん

彼が働くバーに立ち寄り、ジンジャーエールで勝利の祝杯を。

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そして今夜は、彼の家に泊まらせてもらっている。手作りのキーマカレーを振舞ってくれた。辛くておいしかった。今夜はビールがうまい。

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今までの自転車旅で、一番過酷な一日だった。これを乗り越えた達成感は大きい。

しかし、明日はまたさらなる寒さが予想されている。道路も完全に凍結してしまい、予定ルートを変更せざるを得ないかもしれない。

それはまた、明日の朝考えることにしよう。

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挑戦は続く。

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 - 2016 ツール・ド・九州(真冬の九州一周自転車旅)