Run to Infinity

by Yota Nakamura /// 「自転車で世界を旅する元添乗員ライター」中村洋太の挑戦と情報発信のブログ

16歳の中国人をサイクリングに誘ったら、圧倒的な行動力と発想力の違いを見せつけられた話

      2017/05/27

先日この記事でも紹介した、16歳の中国人ティンハオ。イチローも通うという、サンディエゴで一番高級な寿司をご馳走してくれた。

お父さんは中国で2つの会社を経営する人物ということだけあって、凄まじく豪快にお金を使う人間なのだが、彼とのエピソードには、まだ続きがある。

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ぼくのロードバイクを見たティンハオが先週、「俺もそういう自転車を持ってるよ」と言ってきた。

「中国に?」

「いや、サンディエゴで買った」

「でも全然乗ってないじゃん」

彼は毎日、家から学校まで、25km以上の距離をUber(タクシー)で通学している! それだけで毎日50ドルは使っているだろう。

「まだ1、2回しか乗ってない」

「自転車、いくらしたの?」

「3000〜4000ドルくらい」

「は!?」

約40万円前後の自転車を思いつきで買って、全然乗らないというのか。。。

「この野郎〜」と日本語で言ってしまった。

どれだけお金を持っていても、それだけでは人は幸せになれない。

なぜなら、彼の口癖が「ヒマだ〜」だから。何かを手に入れても、ありがたみを持たなければ、すぐに飽きてしまう。彼の自転車が良い例だ。買って、ちょっとやって、終わり。

そして、一緒に何かをする友達の存在も、人生では大切なものである。しかし、彼は明らかに友達がほとんどいないし、ホストファミリーともうまくいっておらず、孤独を感じているようだった。食事にしても、いつも高級なレストランへ行っているが、だいたい一人で食べている。

はるかにお金の少ないぼくの方が、彼よりも精神的に豊かに生きている自信はある。というか、ぼくに限らず、多分ほとんどの人が。

彼に何かを伝えないといけない。そしてそれは、お金があるだけでは、一人でいるだけでは、決して学べない類のことだ。

彼を、サイクリングに誘ってみた。案の定、誰かとサイクリングをするなんて初めてのようで、乗り気だった。

「じゃあ土曜、11:30にここで待ち合わせね」

「OK」

「Yotaさん、good morning.」

その日、彼は待ち合わせ場所に、Uberで無理やり自転車を乗せてやってきた。

「またUberか〜(笑)」

まあ、いい。とりあえず、行くぞ。目指したのは、15km先のソラナビーチ。

たった15kmなのだが、彼にとっては大ごとのようだった。

「え〜? そんなに走るの〜?」

走りながら、ブツブツ言ってくる。こんなに長い距離を走ったことがなかったらしい。

「坂がキツすぎ」
「もう無理」
「休憩しよう」
「Yotaさんもっとゆっくり走って」
「あと何分?」
「つかれた」
「もうここで終わりでよくない?」

彼は、高校1年生の年齢だから、ぼくも当時のことを思い出していた。奇遇にも、ぼくも高1のときにロードバイクに出会い、高校まで片道15kmをチャリ通していた。そういえば、ぼくも一番最初は、15kmなんて想像もつかない距離だったな。

「いけるいける。頑張れ!あと5kmだよ」

「Yotaさん、歳の差考えてよ〜」

「いや、こっちのセリフだよ。お前のが若くて元気だろうが」

「15km長いよ〜」

「ぼくは来月から、毎日自転車で約100km、それを1ヶ月間繰り返すんだ」

「You are fucking crazy!!」(頭がいかれてる!)

文句を言いながらも、なんとか最後まで走りきった。ソラナビーチに着いて、拳と拳をぶつけた。

「やったじゃん。Good job!」

 

うまく言えないが、こういう体験が、きっと彼にとってはとても大切なのだ。お金も大切だけど、それだけが人生ではない。

車を使えば楽にビーチへ行ける。疲れないし、汗もかかないし、喉も乾かない。でも、サイクリングには、サイクリングでしか味わえない魅力がある。そして一人ではなく、誰かと一緒にゴールまで行くという経験もまた大切だ。

何のためのお金なのか、限りある人生の貴重な時間を誰と過ごすのか、ぼくがこれまでの人生で模索してきたことを、言葉ではなく、実体験を通して伝えていきたい。体験もまた、言葉の壁を超えるから。

しかし、この日は見事にやられた。ここから先は、逆にぼくが彼から学ぶ番だったのだ。

ビーチに着くと、彼が突然「うおー!あれやろう!」と叫んで海を指差した。

そこには、サーファーがいた。

「サーフィン?」

「イエス。サーフボードを買おう」

「ははは」と笑ったのは、冗談で言っていると思ったからだ。彼は自転車と財布以外、持っていないし、ぼくももちろん水着すら持っていない。海に入る準備はしてこなかった。

しかし、ぼくが適当に流すと、彼の表情が急に変わった。

「Yotaさん? 俺は真面目に言ってるんだよ」

「え?本気なの? だってうちら何も準備してきてないじゃん。それに、サーフィンのやり方わかるの?」

「わからないけど、やりたいからやるんだ

「You are fucking crazy!!」今度はぼくが言ってしまった。

(やりたいからやるんだ・・・だと? なんて真っ当な言葉なんだ!何も否定できない!)

彼は一度物事を決めると、盲目的になる。足取り早く、近くのサーフショップへ行き、「どのボードにしようか」と言った。

ぼくにとっては初めてのサーフショップ。いくらするんだろう? と値段を見たら、500ドル〜1500ドルくらいした。10万円前後だ。

「Cheap, cheap.」

「安くないよ!」

いやいや、おかしいだろう。こんな思いつきのサーフィンのために、10万円のサーフボードを買うだろうか? しかも、やり方もわからない上に。おまけに、果たして彼が次にサーフボードを使う機会があるのかもわからない。

「せめてレンタルだろう」

「ああ、それいいね」

「Yotaさんもやろう。俺が出すから」

「ぼくはいいよ、写真撮ってあげるからやりなよ」

「ダメだよ、Yotaさんもやるんだよ」

と、何もわからないままサーフボードとウェットスーツを持って店を出た二人。

「くくくっ」

とティンハオはぼくを見て笑っている。

「何がおかしいんだよ?」

サーフィンのことを何もわからないぼくは、少し不安になっていた。

「どうするよ!? 何もわからないのに俺らサーフボード持ってるよ!ははは!」

「こっちのセリフだよ!!(泣)」

しかし、改めて考えると、これはすごいことだ。

彼はビーチに出て、サーファーの姿を見て、「やりたい」と思った。そして、その30分後にはサーフィンを実現してしまっているのだ。その純粋すぎる発想力と、行動力たるや。結果的には大成功じゃないか。

そして、ぼくも若干、初めてのサーフボードにワクワクしていた。心の奥底では、「やってみたい」という気持ちがあったにもかかわらず、金銭的な理由でこれまで無意識に「サーフィン」という選択肢を捨ててきていたことに気付いた。

彼は違った。「やりたいからやるんだ」の言葉通り、一瞬で実現した。

さっき「大切なのはお金じゃない」と彼に伝えようとしていた自分だったが、「やっぱりお金も大事なんだなあ」と考え直してしまった。

十分なお金があると、

・選択肢が増える
・発想に制限がない(なんでもアリ)
・決断のスピードが速い
・実現が速い

→結果的に、より豊かな人生を実現し得る(お金の使い方を間違えなければ)

ということを、ぼくも言葉ではなく、体験を通して教えられた。

とくに「発想に制限がない」という部分は、ぼくは大いに反省しないといけない。これまで、「とにかくおもしろい発想」よりも、「資金的に現実的な発想」を無意識に優先してしまっていたからだ。そうすると、思考にブレーキがかかって、大した発想は出てこない。

一度資金的な条件を無くして、「何でもアリ」の状態から考えた方が、おもしろい発想が生まれる気がした。それに発想が優れていれば、お金の問題は後からクリアできるはずだ。実に考えさせられた。

何もわからない二人だったが、ウェットスーツを着て、サーフボードを抱えて海に出るだけで、楽しかった。ボードにはうまく立てないし、立ってもすぐに落ちてしまったが、西海岸の波があまりに素晴らしくて、それを感じられただけでも楽しかった。

ありがとうティンハオ。何か大切なことを教えるつもりでサイクリングに誘ったけど、結局教わったのはぼくの方だった。

「じゃあ、また学校で」

初めてのサーフィンに満足した彼は、ビーチのすぐ横にUberを呼び、砂だらけのまま自転車ごと乗せて帰っていき、ぼくは家まで20km、また自転車を漕いで帰っていった。

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 - 2017 サンディエゴ語学留学&アメリカ西海岸縦断自転車旅「ツール・ド・西海岸」, アメリカ, 忘れられないエピソード