Run to Infinity

by Yota Nakamura /// 中村洋太の挑戦と発信のブログ

日本サッカー界の至宝、久保健英選手から学んだこと

   

2013年の夏に、ひとりで「ツール・ド・山手線」という企画をやったことがある。自転車で山手線の全29駅を回った。

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知らない人に声をかけ、「駅の看板と一緒に写真を撮ってください」と29回頼んで、一日を終えた。

実にしょうもない企画なのだが、無意味そうな活動のなかに意味を見出すことが、ぼくは大好きだ。

案の定、渋谷駅を通り過ぎるとき、おもしろいことが起きた。

ハチ公前に、同じ服を着た子どもたちがたくさん現れた。しかも、みんな外国人。「小学校の修学旅行で日本に来るか?」と疑問に思ったが、よく見ると彼らの胸にはサッカークラブ「FCバルセロナ」のエンブレムが入っていた。

そして近くに同じ服を着たおじさんがいたので、「何の集団ですか?」と聞いたら、「バルセロナのジュニアチームだよ。日本でサッカーの大会があるんだ。今日は観光さ」と教えてくれた。

バルセロナのジュニアチームと聞いて思い出したのは、久保健英くんのこと。当時バルセロナのジュニアチームで背番号10をつけていて、年間リーグ得点王に輝いた。

その卓越した技術から「日本のメッシ」と称されている、日本サッカー界の至宝ともいうべき選手である。現在15歳にしてU-20日本代表として活躍しているが、ぼくは5年以上前からずっと気になっていた。

「このチームに、日本人の子がいるでしょう!? 久保くん!」

「タケのことか?」

「そう!タケ!彼もいるの?」

偶然にもその日、ぼくがバルセロナのユニフォームを着ていたのを見て、ファンだと思ってくれたのかもしれない、

「ああ、いるよ」と言って、大声で久保くんを呼んでくれた。「Takeーー!」

運がいい。今久保くんが渋谷を歩いていたら、大変な騒ぎになるだろう。しかしこのときは、ハチ公前にいた人々は、ぼく以外、誰も彼の存在に気付かなかったのだ。

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久保くんとひと言だけ話して記念撮影をした。印象に残っているのは、彼が「恐ろしくしっかりした人間」だったということだ。受け答えもそうだし、写真を撮ったときに微塵の笑顔も見せない。たとえ相手が大人であろうと、簡単にニコニコと迎合したりしないのだ。なんだかすごい12歳だなと思ったのを、鮮明に記憶している。

以前、久保くんをバルサへ導いた人物の記事を読んだ。

FCバルセロナスクール選抜の一員としてベルギーで行われた国際大会に出場したときのこと。

オランダのフェイエノールトとの試合で相手に押し込まれる展開になった。センターフォワードとして出場していた久保くんにはコーチから「最大限に深みをつくれ。もっと高い位置をとれ。相手の最終ラインと同じ高さに残って下がってくるな」と指示が出ていた。

だが、久保くんは中盤に下がってボールを受けようとした。試合後、「コーチが下がってくるなと言っていたのは聞こえていたの?」と質問した。久保くんの答えは予想の上をいくものだった。

「コーチが言っていることは分かっていたけど、僕ら(8歳)のキック力だと高い位置にいてもボールが届かないから、意味がないと思って下がったんです」

そのプレーが正解かどうかはさておき、日本人は監督に言われたことに疑問を持たず、言われたことをそのままうのみにする傾向があります。監督の指示に対して、さらに自分の視点を加えた上で判断できる8歳の選手はいないでしょう。

こういう話は自分に置き換えなくては意味がない。

人の意見や指示を単純に鵜呑みにしていないか。自分で判断をし、かつその判断に従った行動を取れているか。

久保くんに対して頼もしく感じる以上に、身が引き締まる思い。ずっと年下の子から、学ばせてもらった。

将来を期待されている人物がその後順調に活躍できるか、というと、うまくいかない場合も多い。しかしあれから4年経った今、彼はプレッシャーをものともせず、見事に期待以上の活躍を見せてくれている。本当に素晴らしいことだ。

そして、自転車で山手線一周。無意味そうなことにも、やはり何かしら意味はあると思うのだ。彼に会えたのだから。

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