Run to Infinity

by Yota Nakamura /// 「自転車で世界を旅する元添乗員ライター」中村洋太の挑戦と情報発信のブログ

旅の終わりに:「ツール・ド・クラフトビール」の経験から学んだこと

   

9月15日、朝10時半。Danさんをホテルで見送り、すぐ東京へ帰るつもりだったのだが、ひとつだけ案内したい場所があった。

静岡駅から6kmほど先にある鞠子宿の「丁子屋」だ。以前も書いたとおり、このお店は江戸時代から400年以上存在し、広重の絵にも描かれている。

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「そこまで一緒に行くよ。My last trip!」

「OK!」

鞠子宿のことも走りながら説明し、そして丁子屋に着いた。

「Oh, Wow.」

風情ある佇まい。中に入り、囲炉裏を見せたり、とろろ職人にさせて写真を撮ったりした。

そして、広重の『東海道五十三次』全55点が飾られる、ぼくの大好きな部屋へ。

通ってきた場所の絵を教えてあげた。

ここの名物は「とろろ汁」

Danさん、とろろは初めて食べるというが、なかなか気に入っていた。もう少しゆっくりしていたかったが、ぼくは戻らないといけない時間なので、ここで本当にお別れ。

「じゃあ、大阪まで頑張ってね。気をつけて。Have a nice trip and enjoy the rest of Japan!」

「本当にありがとう、Yota。いつかまた会おう」

静岡駅に戻り、前職の同僚とお昼を食べ、自転車を分解し、新幹線に飛び乗った。3日かけて走ったのに、新横浜までたったの45分。呆れるほど速かった。

新横浜から30分で武蔵小杉のスタバに着き、そこで仕事をしていた。

なんだか、不思議なものだ。ついさっきまではDanさんを案内していたのに、急に日常に戻ってしまった。夢のような非日常の時間だったが、でも確かに現実だった。日常に戻っても、ジーンと胸に残るものがある。

さて、「ツール・ド・クラフトビール」という、仕事でもない、このボランティア活動は、ぼくに何をもたらしただろうか。

ひとつは、自分の良さに気づくことができた。それは、直接的には収入にならなかったとしても、今回のような経験を買って出れたことだ。

このDanさんの挑戦と日本人とのやりとり、心境の変化を記したブログを、多くの人が読んでくれ、そこから何かを感じたり、受け取ってくれた。

「お金にならないけど、価値がある」という行為が、世の中にはたくさん存在する。価値がある限り、それはいつか自分に返ってくるハズだから、ぼくは恐れずに、そういうことをやっていこうと思う。

川崎からスタートしてから、静岡まで、ぼくは経験と人脈を総動員して、Danさんのために費やした。一度歩いている道だから、道に迷うこともほとんどなかったし、オススメのクラフトビール屋さんへ連れていくことができたし、そして何より、各地にいる友人たちに会わせることができた。

そのとき感じたのは、「ああ、この旅をするために、ぼくはかつて東海道五十三次を歩いたんだ」ということ。すべては繋がっている。

また、英語で全く困らなかった。「ああ、語学留学が生きたな」と感じた。

少しずつ、成長している。やれることの幅が広がっている。

はじめはひとりで旅をした。今度は、仲間を連れて、案内した。しかも、英語で。1年前に同じことをやっても、質が違っていただろう。

ぼくはDanさんから最初にメールをもらったとき、ビビっときて、「一緒に走りたい!」と強く思った。

だから、情熱を伝えて、一緒に走らせてもらった。

結果、「Yotaに案内してもらえて本当に良かった。信じられない経験ができた」と言ってもらえたのだ。

だから、自分の直感や情熱には、素直に従うべきだ。「お金にならないならやらない」というスタンスでは、お金よりも大切なものを失ってしまう場合もある。今回の経験もそう。

こんな貴重な経験、お金で買おうと思ってもできない。「クラフトビールを飲みながら自転車旅をしたい」という外国人なんてなかなか現れないし、そんな人が直接メールをくれたのだから、「これは絶対に神のお導きだ」と運命に従うのがいい。

久しぶりの自転車旅で、特に箱根の山登りはハードだったけど、でもやっぱり、ぼくは運動したり、汗をかいたり、移動をすることで、勢いに乗れる。2泊3日でも十分楽しめるから、これからもちょこちょこ国内を旅したい。

Danさんは昨日、浜松に着き、ぼくの知り合いの方のクラフトビールのお店で飲んできた。オーナーのヨシコさんにも事情を伝えておいたから、きっと楽しい夜になっただろう。

今日は名古屋に向かって雨の中を走っている。台風が来ているので、明日は名古屋に留まるかもしれないと話していた。無事に京都・大阪まで着くことを願っている。

また自転車旅する外国人がいたら、一緒に走りたい。今度は、違うコースで。

一緒に走ることで、思い出を共有できる。「あの道は良かったよね」「面白かったよね」と、きっと何年経っても、そんな話をツマミにクラフトビールを飲めるだろう。

それは今まで一人旅してきたぼくにとって、新しい発見だった。

海外の秘境や絶景を訪ねるのもいいが、もっと身近なところにも、最高の景色がある。年齢も国籍も越えて、人と人とが繋がれたとき、大きな幸福を感じられる。そんな心の絶景を、これからも味わっていきたい。

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 - 2017 アメリカ人Danさんと自転車旅「ツール・ド・クラフトビール」, ブログ, 日本