Nakamura Yota

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早稲田大学交響楽団がヨーロッパ公演。音楽の本場ベルリンも熱狂

      2018/07/25

「NHK交響楽団(N響)」をはじめ、日本には有名なオーケストラがいくつもありますが、音楽の本場ベルリンでそれ以上に評価され、愛されている日本の楽団があります。

写真提供:早稲田大学交響楽団

それが早稲田大学交響楽団(通称ワセオケ)です。

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早稲田大学の現役学生のみで構成されるアマチュアのオーケストラにもかかわらず、ひとたびヨーロッパ公演を行えば、

「世界中のほぼ全てのプロのオーケストラと肩を並べると言ってもいい」(Frankfurter Allgemeine紙)

「世界に名の響いた数々のプロの著名オーケストラと比べることのできるようなアマチュアのオーケストラを、私は一度たりとも聴いた覚えがない」(Sächsische Zeitung紙)

とまで評されます。

今回はワセオケの歴史とプロの楽団にはない特殊性、そして先日現地で聴いた「ヨーロッパツアー2018」ベルリン公演の様子についてご紹介します。

カラヤンコンクールでの優勝が契機に

創立は1913年。100年以上の歴史を誇るワセオケは、1978年の第5回国際青少年オーケストラ大会(通称カラヤンコンクール)で優勝を勝ち取って以来、定期的に海外公演ツアーを行っています。

2000年以降は3年おきにヨーロッパツアーを挙行しており、今年の「ヨーロッパツアー2018」で15回目の海外公演ツアーとなります。

ここまでの活動規模になったのは、やはり1978年のカラヤンコンクールに端を発するのですが、音大生でもない、学生のアマチュアオーケストラが、各国のプロの卵たちを向こうに回してコンクールで優勝できたのには、一体どのような背景があるのでしょうか。

永久名誉顧問・田中雅彦氏の貢献

長年にわたりワセオケを指導してきたのは、永久名誉顧問の田中雅彦氏です(今回のベルリン公演でも指揮を担当)。

田中氏は1955年の入学と同時にコントラバス奏者としてワセオケに入団。卒業前にNHK交響楽団に入団し、その後3年間の留学生生活をベルリンで送るなど、生活は多忙を極めていました。

写真提供:早稲田大学交響楽団

1975年の秋、ベルリンのカラヤン財団から、財団主催の国際青少年オーケストラ大会への参加を打診する書簡が当時のワセオケ音楽監督・山岡重信氏のもとに届きました。

その書簡を持って当時の学生幹事が田中氏へ相談したのが、その後の長きにわたるワセオケとの関係の始まりになりました。

数々の国際コンクールの審査員としての体験から、「コンクール1位は勝利、2位は敗北と強く印象づけられていた」と言う田中氏。

「コンクールは勝ちに行くのでなければ参加すべきではない。勝ちに行くとはっきりと決めて、私の言うとおり稽古すれば勝てる!」

その言葉に嘘はなく、当時難曲とされていたストラヴィンスキーの『春の祭典』を、「モザイクの一個一個を磨き上げるように完璧に仕上げ、カラヤンと審査員はもとより、ベルリンのメディアや聴衆を仰天させての優勝」でした。

帰り際、「君のオケは世界一だ」と田中氏に言ったのは、史上最高の指揮者と称された「帝王」カラヤン。

この出来事がきっかけでワセオケとカラヤンの交流が始まり、翌年には大隈講堂での公開リハーサルでワセオケを指揮し、82年から開始された国際的な活動の場面でもカラヤンが「鶴の一声」を発してくれたといいます。

ワセオケならではの特殊性

毎年の卒業・入学シーズンになると、団員の約25%が入れ替わり、4年後には現在いる団員全員がいなくなります。

これがワセオケの特殊性です。団員は「現役の」「早大生のみ」で構成され、3年に一度のヨーロッパツアー(基本的に2〜4年生のみ参加)は毎回異なる団員によって演奏されます。

おまけに、楽器の初心者として入団するメンバーも毎年少なからずいます(この文章を書く私も2007年、オーボエの初心者としてワセオケに入団しました)。

写真提供:早稲田大学交響楽団

それにもかかわらず、オーケストラのレベルはプロ顔負けの高い水準を維持し続けています。これは極めて奇跡的なことで、正しい指導と学生たちのたゆまぬ努力、そして歴史と伝統を重んじる精神のもとに成り立っていると言えるでしょう。

音楽のプロを目指しているわけではないので、一人ひとりの技量は、音大生には遠く及びません。しかし、オーケストラとしては、彼らよりも遥かに良い音を出すのです。これがオーケストラのおもしろさでもあります。

写真提供:早稲田大学交響楽団

第15回海外公演「ヨーロッパツアー2018」

「ヨーロッパツアー2018」では、2018年2月から3月にかけての約1ヶ月弱、ドイツ・オーストリアの2カ国12都市で演奏が行われました。

2月20日 オーバーハウゼン ルイゼ・アルベルツ・ハレ
2月21日 ボン ボン大学講堂
2月22日 フランクフルト アルテ・オパー
2月25日 ザルツブルク 祝祭大劇場
2月27日 ウィーン 楽友協会
3月2日 ハンブルク エルプフィルハーモニー
3月4日 ベルリン フィルハーモニー
3月5日 バイロイト ツェントラム
3月6日 ニュルンベルク マイスタージンガーハレ
3月7日 ミュンヘン ガスタイク
3月9日 フライブルク コンツェルトハウス
3月11日 ヴィースバーデン クアハウス

主な演奏曲目は、
ニコライ / 歌劇「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲
R.シュトラウス / 家庭交響曲 作品53
チャイコフスキー / 幻想序曲「ロメオとジュリエット」
石井眞木 / 日本太鼓とオーケストラのための「モノプリズム」

指揮は山下一史氏、寺岡清高氏、田中雅彦氏が担当。

写真提供:早稲田大学交響楽団

「モノプリズム」では、日本を代表する太鼓奏者・林英哲氏と英哲風雲の会と共演が実現。

さらに2017年1月グランドオープンのハンブルク「エルプフィルハーモニー」では、日本人としてはワセオケが初めて演奏しました。すでに今世紀を代表する名建築と言われています。

大成功に終わったベルリン公演

2018年3月4日に行われたベルリン「フィルハーモニー」での公演は、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のインターネットプログラム「デジタルコンサートホール」で生中継されました。

歌劇「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲で聴衆の心を掴むと、R・シュトラウスの大曲「家庭交響曲」で圧巻の演奏を魅せ、プログラム前半から大きな拍手喝采に包まれました。

「家庭交響曲」のヴァイオリンソロで魅了したコンサートマスターの石井千星さんは、基幹理工学部の2年生です。

写真提供:早稲田大学交響楽団

 

写真提供:早稲田大学交響楽団

後半も迫力ある和太鼓の演奏で会場総立ちのスタンディングオベーションとなり、最後はアンコールの「ベルリンの風」で締めくくられました。

2時間半に及ぶ長いプログラムでしたが、これ以上ない大成功だったと言えるでしょう。学生たちは大舞台で堂々とやってのけました。

写真提供:早稲田大学交響楽団

凱旋公演となる第202回定期演奏会は、2018年3月22日(木)東京芸術劇場で行われます。ヨーロッパでの本番を繰り返し、さらに成長したワセオケの演奏を楽しみにしています。

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