「中国のシリコンバレー」といわれる深圳(深セン)を訪れています。
もともとは何もない漁村だったというこの場所が、今や人口1400万人の大都市となり、世界屈指のIT拠点として名を馳せるまでになりました。のどかな山を見渡せた香港と深圳のボーダー付近とは異なり、市内中心部は圧倒されるような高層ビルが並び立ち、人々はシェア自転車に乗って颯爽と過ぎていきます。
ドローン世界最大手のDJI、そしてアジアナンバーワン企業であるテンセントもこの街に本社を持ちます。テンセントは「WeChat(微信)」というチャットサービスで躍進を遂げました。
日本でいえばLINEですが、さらに発展させて「WeChatPay」というモバイル決済を中国全土で普及させたことにより、とんでもない規模にまで成長しました。
深圳に住む知人がおらず困っていたのですが、幸運にも現地のFIND ASIA LTD.という会社で働く加藤勇樹さんとお会いすることができ、深圳についての貴重な情報を聞かせていただきました。
加藤さんは3年前から中国に住んでいて、この1年は香港と深圳を行ったり来たりする生活だそうです。面識どころか共通の友人もいなかったのですが、出発前日に加藤さんの存在を知り、Facebookでメッセージを送ったところ、到着日に夕食を共にしていただくことができました。ラッキーです。
まず、キャッシュレス社会の話がおもしろかった。
「この3年でガラッと変わりました。私が中国に来た3年前は、まだ多くの人が現金で支払っていました。2年前にはだんだん現金を使う人が減ってきて、去年くらいだと「まだ現金使ってるの?」という感じ。今は9割がモバイル決済です」
急速にモバイル決済が浸透した背景には、偽札の横行があったようです。高額紙幣が100枚あれば数枚は偽札が混ざっていたそうで、受け取る側はいちいち偽札じゃないか確かめていたそう。
一方日本は、世界的に偽札の少ない国。店側が困る場面も少ないので、キャッシュレス化がなかなか進まないのは仕方ないことかもしれません。
成功している企業が多いイメージなので、さぞかし皆高給取りなのだろうと思っていましたが、意外にも「とはいえ中国。平均的に見ればまだまだ」という感じでした。
たとえば深圳エリアの大卒の初任給が約5000元。日本円にすると8万5000円くらいだというので驚きました。まだまだ物価は低いです。だけど深圳は家賃が高めで、一人暮らし用の家の相場は2500元くらいなので、およそ給料の半分が家賃に持っていかれるそう。
食後に加藤さんとスタバでコーヒーを飲んでいると、周りの客を見渡しながら「よくみんなスタバなんて来られますよね」と話していました。若い人にとってはちょっとした贅沢ということです。
短い時間でたくさんお話しいただいたので、まだ自分の中で情報の整理がちゃんとできていませんが、これまでの深圳に関する記事に載っていなかった話もありました。
たとえば、国が主導で進める広州・香港・マカオを結ぶ「グレートベイエリア構想」の話。
科学技術分野において広州、香港、マカオの三地の連携が進んでいない状況がありましたが、このデルタ地帯を「グレートベイエリア」として協力メカニズムを構築することで、2030年までに東京やニューヨークを上回る世界最大のベイエリアを目指すとされています。
シルクロードの「一帯一路」構想と同じく注目されているものだそうですが、日本のニュースではほとんど聞いたことがありませんでした(「一帯一路」はNHKスペシャルで特集されたり、記事も多くできてきました)。
このグレートベイエリアだけで人口6700万人、GDPでは既に韓国とロシアを抜いているそうで、末恐ろしいエリアです。
この話を聞いたとき、「そういう構想があるのなら、そのうち香港とマカオが橋で結ばれそうですね」と加藤さんに話したところ、
「実はもう完成しているんです」
「え!?Google Mapsにはないですよ?」
「表示されていないだけで、実際には完成しているんです」
2018年中に開通する予定で、全長55kmの世界最長の橋だそうです。今度フェリーから見てみます。
その他、「深圳ではここへ行くといいですよ」という場所をいくつか教えていただきましたが、それはまた後ほど。
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