ドイツ 行ってみた

「シャガールが遺した青の世界」ザンクト・シュテファン教会(ドイツ)

投稿日:2012年10月31日 更新日:

「空の端の方に一筋青い輪郭があらわれ、それが髪に滲むインクのようにゆっくりとまわりに広がっていった。それは世界じゅうの青という青を集めて、そのなかから誰が見ても青だというものだけを抜き出してひとつにしたような青だった」 (村上春樹『国境の南、太陽の西』より)

ぼくが「青」について話をするときに、欠かすことのできないものがある。それは、ドイツのマインツという町にある小さな教会だ。

ドイツ第二の都市フランクフルトから、南西へおよそ40kmのところに、マインツはある。ライン川とマイン川の合流地点に開け、
ローマ時代から交通の要所として発展してきた町で、ルネッサンスの三大発明のひとつである活字印刷を発明したグーテンベルクもこの町に生まれた。

しかし、そんな歴史的なことには正直あまり興味はなかった。ぼくがこの町を訪れた目的、それはザンクト・シュテファン教会でシャガールのステンドグラスを見ることだった。

旅の計画を立てているとき、「この教会のステンドグラスは素晴らしい」と教えてもらったのだ。「素晴らしすぎて、何回も行っている」と。ちょうどフランクフルトからボンへと向かう際の通り道でもあったので、寄ってみることにした。

町の中心から少しだけ離れた丘の上に建つザンクト・シュテファン教会は、外から見る限り、特段変わった特徴はない。「さて、中はいかがかな」と思いながら、ぼくは一歩、教会の中に足を踏み入れた。その瞬間、心の中で唸り声を上げた。

こんな青、見たことない。

教会の奥に、柱のように並ぶ3本のステンドグラス。そのあまりの美しさに、ぼくはただただ息を呑んだ。優しい青、深海の青、さまざまな青に、空間が包み込まれている。

これまでヨーロッパを旅するなかで、様々な景色を見てきたが、「何がいちばん美しかったか」と聞かれたら、このステンドグラスを挙げる。他にもニースのシャガール美術館でステンドグラスを見る機会はあったが、圧倒的にマインツの方がよかった。

フランスのメッスにあるサンテティエンヌ大聖堂で見たシャガールの黄色のステンドグラスは、一見の価値がある。

とにかく、マインツは一度訪れてほしい。写真で見るより何倍も美しい、この世のものとは思えない「青」の世界だった。

-ドイツ, 行ってみた
-,

執筆者:

関連記事

【自転車旅】ツール・ド・ヨーロッパ(50)フリブール~バーゼル~フライブルク(ドイツ)

「グーテンターク」再びドイツへ・・・ ツール・ド・ヨーロッパ 第50ステージ フリブール~バーゼル~フライブルク(ドイツ) 75km 朝はあまり時間がなかったので、自転車で旧市街を一周。小さな町なのに …

【自転車旅】ツール・ド・ヨーロッパ(1)ハイデルベルク〜フランクフルト

ツール・ド・ヨーロッパ 第1ステージ ハイデルベルク~フランクフルト 昨夜は盛り上がって宇野さんと夜中の3時半まで話していた。宇野さんはクラシックが大好きで、ぼくが持ってきたワセオケのベルリン公演のD …

【本当にインド?】南インド最南端に広がる驚きの色彩世界

旅行会社に勤めていたとき、南インドのツアーを刷新するため、ぼくが指名されて、2015年に視察へ行った。 ヒンドゥー教の聖地、コモリン岬での発見 インド最南端のコモリン岬(カニヤークマリ)は、アラビア海 …

【シリコンバレーのオフィス見学④】Apple本社へ行ってみた!

シリコンバレーのクパチーノにある、Apple本社に行ってきた。 社員さんと一緒だったが、ビジターが立ち入ることのできるエリアは少なく、また写真を撮れる場所もかなり限定的になっていた。 それゆえ、ここに …

【お寺ステイ】広尾のお寺で朝の座禅を

昨日の朝は、「お寺ステイ」が主催する「東京朝ZEN活部」に参加してきました。 朝6時前に家を出て、7時から広尾のお寺で約1時間、座禅を組みました。 その後、スマートロック事業で注目を集める、株式会社フ …