読んでみた

「米仕事よりも花仕事を」ななつ星デザイナー・水戸岡鋭治さんの仕事哲学

投稿日:

「仕事には2種類あります。『米仕事』と『花仕事』です」

そう話すのは、クルーズトレインななつ星をはじめ、長年にわたりJR九州の列車をデザインしてきたデザイナーの水戸岡鋭治さん。内装に木材を多用した温もりのある「ななつ星」の空間は、多くの人を驚かせた。

水戸岡さんは、企業人としての稼ぎ仕事を「米仕事」、公共的・社会的視点で行う金銭的代価を超えた仕事を「花仕事」と名付け、よく使っているという。

米仕事は経済につながる仕事で、花仕事は環境や文化を大切にする仕事であるとも説明している。

「日本では経済重視の『米仕事』の人が圧倒的に多いんですが、私はできるだけ文化を持ち込んだ『花仕事』をしていきたいと考えているんです」

彼は車両のデザインこそ、自らの「花仕事」としている。

しかし、「花仕事」というのは、どうしても目先の利益が下がってしまう。

たとえば鉄道車両などで、床材をプラスチックにすれば低コストでメンテナンスも容易だが、木材を使うと、高コストなうえメンテナンスが大変になる。

それでもあえて水戸岡さんが木材にこだわる理由は、「そこに文化を持ち込みたいからだ」というのである。

たとえ目先の利益が下がろうとも、木材で魅力的なものを作っておけば、それに惹かれた人たちが「本当のファン」になってくれる。そしてそれは、結果的に長続きにつながっていく。

「経済性と文化性のバランスを保つようにしていくと、皆がそこそこ好むものができ上がってきます。実際にそのバランスを追求することが、最終的に一番いい結果を生む可能性が高いのです」

この話、車両のデザインに限った話じゃない。素敵な考え方じゃないか。目先の利益よりも、文化や感性を大切にする「花仕事」を、ぼくもやっていきたい。

あと1%だけ、やってみよう 私の仕事哲学
水戸岡 鋭治
集英社インターナショナル
売り上げランキング: 103,100

-読んでみた
-

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

個人でベーシックインカムの実験を始めることにした

(2017年10月5日追記)「希望の党」がベーシックインカムを公約に掲げてビックリしました・・・。 フィンランドにオランダにカナダにと、海外ではどんどんベーシックインカムの実証実験が始まっていますが、 …

「写真は見たものしか写らないが、文章は・・・」写真家・長島有里枝さんの類稀な文才

去年、『anan』の表紙写真に思わず目を奪われた。 自分がポートレート写真にハマっていた、絶頂のときだった。 (誰だ、この写真を撮ったのは) 一目散に目次を開いた。 「撮影:長島有里枝」の文字を見て、 …

【アラスカ】星野道夫さんと「もうひとつの時間」

頭上でオーロラが爆発したとき、ぼくは言葉を失い、夢中になってカメラを向けていたけど、最後は写真を撮るのもやめて、雪原の上に大の字になり、ただただ光のショーを眺めていた。この光景をしっかりと目に、そして …

怠け心と闘って勝ち取る、自分らしさ、本当の美しさ

ある日の朝のこと。駅まで歩く途中、引越し屋さんがトラックの荷台の中で作業をしていて、手が滑ったらしく、箱がひとつ、横を歩いていたぼくの近くに落ちてきた。おじさんはそれを拾おうとトラックを降りようとして …

異才の数学者、岡潔「人の情緒は固有のメロディーで、その中に流れと彩りと輝きがある」

年に1回は、風邪を引く。 元気なときは、書きたいことが頭の中にどんどん浮かんでくるものだけど、疲れているときや体調が悪いときは、なかなか文章が出てこない。 他人の頭を覗いたことはないけれど、人と比べて …

S