ツール・ド・ヨーロッパ
第3ステージ
ヴィースバーデン〜マインツ〜(電車)〜ボン
32.5km
ヴィースバーデンのホテルで、また奇跡が起きた。朝食を隣で食べていたブレーメン出身のご夫妻に話しかけたら、仲良くなった。自転車で旅をしている概要を話すと、10ユーロを差し出してくださった。
「私もYour supporter よ。Have a nice trip!!」
旗に名前を書いてもらった。2012年のヨーロッパツアーの際は、ワセオケの演奏もぜひ聴きたいと言っていた。本当にいいご夫妻だった。
準備を整えて出発。さらばヴィースバーデン!また来るよ!
自転車は快調。しばらく走るとライン川にぶつかった。この川の向こうがマインツ。
最初に訪ねたのは、IBMドイツ支社。
なぜこんな場所に来たのか。実は、以前知り合った日本IBMに勤める山崎さんに、お知り合いのハンスポールさんを紹介していただいた。
日本での飛び込み営業とまったく同じ要領で、ぼくは会社に突っ込んだ。協賛集めの経験が、確実に今に生きている。人生はなんとうまくできていることか。半年前の自分とは違う。今のぼくには度胸がある。
「Hallo. I came from Japan. I want to meet Mr.Hans-Paul.」
「OK. そこのソファで待ってて」
そして、出てきたハンスポールさん。
「Nice to meet you Yota !! Let’s go !!」
自転車をIBMに置き、ハンスポールさんの車でマインツ市街地へ。案内してもらった。
マインツは活版印刷を発明したグーテンベルクの生地でもある。
ここで聖書が大量に印刷され、急速にキリスト教が広まっていったのだ。
これはロマネスク様式の大聖堂。ケルン、トリアーと並び、ドイツで3本の指に入る大聖堂だ。
そして、なんといっても、ぼくがマインツに来たかった理由はただ一つ。シャガールのステンドグラスを見たかったのだ。
丘を登った所にある、ザンクト・シュテファン教会。
ここのステンドグラスを手掛けたのが、マルク・シャガール。教会に入ると、この世のものとは思えない、美しい「青」が目に飛び込んできた。こんなの見たことない・・・
どのように表現しようかと散々考えたが、適切な表現が見つからない。どんな言葉で言い表しても、陳腐なものになってしまう。それほど圧巻の青の世界なのだ。
旧約・新約聖書を題材にした優しい青の光に包み込まれ、ぼくはなかなかその場を離れることができなかった。写真で全てを伝えることはできない。生で見れば何倍も美しい。
ハンスポールさんと別れた。
「本当にありがとうございました」
「こちらこそ、楽しい時間をありがとう。気をつけて、自分の旅を楽しんで!」
アイス屋さんに連れて行ってくれたり、本当に親切な方だった。IBMの山崎さん、ありがとうございました!
日が暮れ始めた。今日の予定はまだ決めていなかった。この先自転車で走っても、大きな街がないことはわかっていた。ぼくは勢いで電車に飛び込んだ。
悠久のライン川を見ながら、うとうと眠りながら・・・着いたのは、旧西ドイツの首都ボン。
連絡を取って、ボン大学に留学している早稲田大学国際教養学部3年生の作見さんの寮に泊まらせてもらえることになった。会ったのは初めてだけど、共通の友達が2人いた。日本から遠く離れた場所で、同じ大学の学生に会えてなんだか嬉しい。
これからボンを観光してくる。