気合で乗り切る。
ツール・ド・ヨーロッパ
第49ステージ
ヴェヴェイ~フリブール
68km
朝起きて、頭痛がした。そして少し気持ち悪い。
やっぱり昨日かなり無理をしたんだろうか。本当ならもっと寝ていたいところだが、今日も走らなくてはいけない。
ヴェヴェイから2kmくらい走り、世界遺産に登録されている『ラヴォーのぶどう畑』を見てきた!
ぶどう畑が世界遺産って、なんだかすごい。
約30kmに渡ってぶどう畑が続いている。チャップリンは、このラヴォーのぶどうで作られたワインこよなく愛したそうだ。
ぶどう畑とレマン湖。いい風景だ。
今日はスイスの首都ベルンまで行く予定だった。スイスに旅行した色々な人が、「ベルンが一番お勧め」というので、ぜひ行ってみようと思っていた。しかし、ネットで調べると宿はどこもいっぱいで、唯一空いていたのは一泊6万円のホテル。そんなの無理無理。
ベルンは諦めて、別の街を探そう。だいたい日本人観光客がスイスで行くとしたら、ベルン、ジュネーブ、バーゼル、チューリヒ、ローザンヌ・・・と、そんなところだろう。どうせなら普通の人があまり行かない場所に行きたい。どこかないかな・・・
「ここだ」
と思ったのは、フリブールという街。調べてみると、中世の町並みが残り、『スイスの宝石』とも呼ばれているそうな。ヴェヴェイから60kmくらいの距離。よし行ってみよう。
ヴェヴェイを出発すると、すぐに峠が待っていた。かなり長い坂道だ。走り始めたばかりなのに、前日の疲れが相当残っているらしく、早くも足が痛い。
だが負けるわけにはいかない。はぁはぁと走る。
これしきの・・・山に・・・日本人が・・・負けてたまるかー!
登った。標高850m。待っていた景色は最高。
登った分だけ、辛い経験をしただけ、楽しい出来事が待っている。これは自転車旅だけではない。困難を乗り越える度に心は広くなっていく。不自由な経験をすればするほど、心は自由になっていく気がする。登りながらそんなことを考えていた。耐えられるぞ・・・。
そして更に山の上に、平地が広がる。これがスイス。頭が痛いことも忘れてしまった。
なんという緑だ・・・。
しかしその後、思わぬハプニングが待っていた。
入り組んだ道を走っていると、横をパトカーが通り過ぎた。
「あ、パトカーだ」 と思っていたら、ピカピカライトが点いた。速度違反の車でもあっただろうか。
ぼくの100mくらい先で、パトカーが止まり、女の警官が出てきた。こっちを向いて、手を振った。
「止まりなさーい」
ぼくかいな!!( ゚ ▽ ゚ 😉
ぼくが何をしたというんだ・・・。
「何ですか?」
「あなた、ここは高速道路よ」
うそーん。
「え!?だって高速道路は緑の標識でしょ?この道路は青の標識だった。」
「確かに青の標識だけど、あそこに書いてあるのは『高速道路』っていう意味なのよ」
じゃあ・・・
緑で書けやー!!!!( ゚ ▽ ゚ 😉
ぼくは、赤色で「青」と書いてあるのを読む日本の頭脳パズルを思い出した。なんだか腑に落ちないが、いずれにせよ高速道路だったようだ。(こっちの高速道路は料金所がないので、仮に入っても全然気づかない。)ほんの数百メートルだけ走ってしまった。
「パスポートを見せて」
「はい・・・」
どうなってしまうんだろう・・・。警察署に連れて行かれたりするのかな・・・。罰金もあるのかな・・・。あわわわわ。
なんだか無線で「ナカムーラ」と言っている。本部と何の連絡を取っているんだろうか。それでパスポートを返された。どうやらぼくの身元か何かの確認が取れたらしい。
「はい、オッケーよ。どこへ行くの?」
「(おっけーなの?) フリブールです」
「フリブールはこの道よ。さぁ、今なら車が来てないから行けるわ。気をつけてね。」
「お、おー、いえす・・・ぐっばい!さんきゅー!」
なんかちょっと親切な警官だった。何もなく見逃してくれた。良かった~。
事故も病院も警察も、ぼくは何でも体験してしまうんだな・・・。でもこれも貴重な経験か・・・。
その後もアップダウンを繰り返し、17時にフリブール到着。
クタクタだー。汗だく。宿でシャワーを浴びて、外に出る。あまり時間がなかったので、今日は聖ニコラ大聖堂だけ見てきた。1283年から1490年にかけて建てられた。200年以上も・・・。ステンドグラスで有名らしい。
確かにこういうステンドグラスはあまり見たことがない。
明日の朝、旧市街を少し散策してみようと思います。