UTCというサンディエゴ郊外のショッピングモールを歩いていたときのこと。見慣れた名前の、見慣れないお店があった。
「Amazon Books?」
Amazonにリアル店舗なんてあっただろうか? 調べてみると、タイムリーな事実を知った。
「Amazon Books」は、2015年にシアトルで1号店をオープンさせ、このサンディエゴの店舗は2号店だそう。そして、ポートランド、シカゴ、ボストンに続き、今年5月25日にニューヨーク店がオープンしたばかり。
書店には変わらないのだが、店舗に入ってみて気付いた特徴は、すべての本が、表紙を向けていること。日本の書店では普通、ほとんどの本がタイトルだけわかる形で棚に収められており、一部のピックアップされた本のみ表紙を見せている。
しかし、この「Amazon Books」においては、すべての表紙がパッと目に入ってくる。するとどうだろう、多くの本を無意識に手にとってみたくなった。今までは本をピックアップする際に、「タイトル」だけで選んでいると思っていたが、実は「表紙デザイン」の力が大きかったのかもしれない。
ところで、もうひとつアメリカの書店事情に関して驚いたことがある。
それは、日本ではどこの駅前でもあるようなこうした書店が、アメリカでは実に少ないということ。自転車で街を走っていても、書店を見かけることはほとんどない。
Google Maps で「Book Stores」と検索すると、確かにいくつ書店はピックアップされる。しかしそれらの書店に実際に足を運んでみると、そのほとんどが「古本屋」なのだ。
長く生活している人に、「大きな本屋はないの?」と聞いて、ようやく1つ、本屋らしい本屋にたどり着くことができた。ここもまたショッピングモールの中だった。
ただ、店の広さに比べて、お客さんはそんなに多くなかった。どうやら、今やアメリカ人の多くが書籍をAmazonで購入しているようだ。あるいは電子書籍で読んでいるため、こうした書店が本当に少なくなってきているという。
そのような背景の中で、急速に拡大してきている「Amazon Books」。オフィシャルサイトを見ると、近日オープン予定の店舗が複数表示されている。
「やっぱり、本は実際に手にとって選びたいよね」という感情を、Amazonは再び人々に抱かせようとしているのかもしれない。