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登山家・栗城史多さんの死に思うこと(3)「死を意識する」

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昨日からずっと、「もし自分が35歳で死ぬとわかったら、明日からの生き方を変えるだろうか」と考えていました。明日が今日になってみて、何が変化したのか、よくわかりません。ただ、「変わらなきゃ」という想いが彷徨っています。

人生100年時代と言われ、そこまでいかなくとも70〜80歳まで生きるだろうという前提で、日々を過ごしています。だから正直、あと5年の命だと思っても、実感が湧かない。5年って、1825日。長いような、あっという間なような。

だけど人生は不条理で、何が起きるかわからない。自転車旅の途中で事故に巻き込まれるかもしれないし、旅先でテロに遭うかもしれない。確実なことは何も言えない。

星野道夫さんは、『旅をする木』というエッセイ集の中で、アラスカに行った理由は友人の死がきっかけだったと語っています。

「僕は21歳で遭難したTの死からひたすら確かな結論を捜していた。それがつかめないと前に進めなかった。一年がたち、ある時ふっとその答えが見つかった。何でもないことだった。それは「好きなことをやっていこう」という強い思いだった。Tの死はめぐりめぐって、今生きているという実感をぼくに与えてくれた。僕は再びアラスカに行くことを決めた」

あるいは、ネスレ日本社長の高岡浩三さんという方がいるのですが、以前この方のインタビュー記事を読んで、こんな話が印象に残っています。

「父が肺がんで42歳で亡くなりました。その時、祖父も42歳で亡くなったことを母から聞かされ、「ひょっとすると遺伝かもわからないので気をつけなさい」と言われました。11歳の私は、高岡家の長男は42歳で死ぬ運命なのではないか、とうっすら思うようになりました。人生の締め切りは42歳。ほかの人より2、30年短い人生を意識し始めたことは、就職にあたっての会社選びや仕事の進め方にかなり影響するようになります。

42歳で人生が終わるかもしれない。そう考えた時に、ではあと何年あるのか?それまでに成し遂げたいこととは何か?そのためには、いつまでに何をやる必要があるのか」

そんな風に考える習慣がついたといいます。ちなみに、今日のキットカットが受験生のゲン担ぎアイテムとして定着したのは、高岡さんの功績によるものです。その後も様々なアイデアを実行に移し、ネスレ日本社長まで上り詰めました。

スティーブ・ジョブズの有名なスピーチも思い出します。

「17才のとき、私はこんな文章を読みました。「一日一日を人生最後の日として生きよう。いずれその日が本当にやって来る」。強烈な印象を受けました。

そして33年間、毎朝、鏡をみて自問自答しました。「今日が人生最後だとしたら、今日やることは本当にやりたいことだろうか」。「No」という答えが幾日も続いたら、私は何か変える必要があると知るのです。

死を意識することは、人生において、大きな決断をする価値基準となる、最も大切なことです。なぜなら、ほとんど全て、外部からの期待やプライド、恥や失敗への恐れ、これらは死によって一切なくなるのです。

あなたが死を意識することが、失うことを恐れない、最良の方法なのです。あなたたちは既にありのままなのです。思うままに行動しない理由はないのです。

君たちの時間は限られている。だから無駄に誰かの人生を生きないこと。ドグマに捕らわれてはいけない。それは他人の考え方と共に生きる、ということだから。他人の意見というノイズによって、あなた自身の内なる声、心、直感をかき消されないようにしなさい。

最も大事なことは、あなたの心や直感に従う勇気を持つことです。それら内なる声、心、直感は、どういうわけか、君が本当に何になりたいのか、既に知っているのです」

何のために働くのか、何のために生きているのか、そんなことなかなか人と話せないけど、本当に考えさせられます。

栗城さん、ありがとうございました。ご冥福をお祈りします。

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