和菓子の名店を自転車で巡る、「ツール・ド・和菓子」という企画が生まれたのは、2013年秋のこと。
きっかけは、とんねるずの「食わず嫌い王決定戦」だった。ゲストが手土産を持参するシーンを観ていて、「人と会うときに、手土産を渡すのって素敵だな」と思った。小さな贈り物をする習慣は、きっと人生を豊かにするだろう、と。
しかし、いざやってみようとしたら、困った困った。いったい何を手土産にしたらいいのか。「ここの〇〇はおいしいから」と、自信を持って渡せる「持ち駒」が自分にはないことに気付いた。
すぐに書店に行き、都内の和菓子の老舗や名店が網羅された雑誌を買ってきて、気になるお店をひとつひとつ調べていった。口コミなどもよく読んで、「ここは間違いなく名店なのだろう」と目星をつけたお店の場所をGoogle Maps上に落とし込み、これらのお店を巡ることにした。
目的は、自信を持って渡せる手土産を見つけること。「『おいしい』と評判のお菓子」ではなく、「自分が『おいしい』と思うお菓子」(なので、口コミはあくまでお店選びの参考に過ぎない)。
山手線の内側や、その周辺に散らばる星印(お気に入り登録したお店)を眺めていて、あることに気付いた。これらのお店を限られた時間でできるだけ多く訪ねるなら、電車よりも、自転車で巡った方がきっと効率良く回れる、ということを。過去に何度か自転車で山手線を一周したことがあったから、すぐにそう思った。
さらに、「きっとぼくと同じように、都内にどんな和菓子の名店があるのか知りたいという人は多いはずだ」と思い、友人を誘ってこれを企画化した。これが、「ツール・ド・和菓子」誕生の瞬間だった。これまでに何度も実施し、毎回参加者から好評を得る人気企画となった。
今なら、自信を持って渡せる手土産がいくつも思い浮かぶ。当初の目的は達成されたが、ぼくは日本の心とも言える「和菓子」の魅力、それから都内を自転車で巡る楽しさを、外国人観光客も含めてより多くの人に伝えたいと思い、この企画を続けている。