遠くに、何か見えた。
横手の「かまくら祭り」は有名だが、実はその翌日に同じ場所で、もうひとつの熱い祭りが開催されることは、あまり知られていない。
おお!
梵天コンクールである。
横手旭岡山神社へと奉納される梵天を、地元の人々が作る。その出来を競うコンクールなのだが、毎年その年話題になったテーマの梵天があったり、そうでなくとも豪華絢爛な立派な梵天たちには目を奪われる。
今年何よりも目立っていたのは、五郎丸だった。
「ジョヤサ!ジョヤサ!」
と、男たちが威勢よくかけ声をかけながら、梵天を高々と上げて、目の前を通り過ぎていく。
観光客はほとんどおらず、地元の人のためのお祭り、という印象だった。
次に向かったのは、横手市の増田町。
実は2年前にこの町が、国の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定された。
かといって、メインストリートを歩いても、とくに目立った家並みは見られない。
(え?これが?)
という印象なのだが、実は外観からでは、増田町の凄さはわからない。
中に入って、家の中に立派な通路があることに驚く。
そして奥に進むと、「内蔵(うちぐら)」と呼ばれる重厚な蔵が姿を表す。
交通・交易の要衝として江戸時代から栄えた増田町は、明治になっても県内でも指折りの商業地だった。
主人たちは、家の外観を立派にすることはしなかったが、代わりに、内部に立派な内蔵を作った。これは、雪対策でもある。家の中であるため、本来所有者しか見ることはできないものだが、現在では見学料を主人に払い、「家の中を見せていただく」という形が可能になっている。
各家の主人は、自慢の内蔵を、見事に説明してくれた。傷がついておらず、実に立派。材料も最高級のものを使っているそうだ。これが海外だったら、外観の装飾を権力や資金力の象徴とするはずだが、ここは家の内側に。
外から見ても、すごい家とは微塵も感じないのだが、中に入ると「うわあ」と思ってしまう。そして豪雪地帯ということもあって、その機能性から各家が真似をしたのだろう。内蔵を持つ家が何軒も並んでいるのは、日本でもここにしかない、珍しいものだ。
お昼。漬物が芸術作品のように思えた。
湯沢では、明治7年創業の「両関酒造」を訪ね、日本酒の製造工程を教えていただいた。
ぼくにとって初めての酒蔵見学で、とても楽しかった。最後は試飲もできた。
そして最上川に沿って走った。
「五月雨を あつめて早し 最上川」
と松尾芭蕉が詠んだ最上川。とても美しかった。
遠くには月山が。
山形県の酒田市に着いた。日本海の港町。魚が旨い。
明日はいよいよ、江戸時代から280年の伝統を誇る「黒森歌舞伎」の鑑賞である。
実に楽しみだ。
挑戦は続く。