2016 ツール・ド・九州(真冬の九州一周自転車旅)

【ツール・ド・九州 第3ステージ】それでも、走り続ける

投稿日:2016年1月26日 更新日:

ツール・ド・九州 第3ステージ
熊本県熊本市〜熊本県水俣市→鹿児島県鹿児島市
走行距離87km 

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「・・・トントントントン・・ジャーー」

「・・・・ん」

温かみのある音で目が覚めた。

「おはよう。朝ごはんできたよ」

台所で大ちゃんが朝食を作ってくれていた。料理男子。かっこいい。

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大寒波の影響はどうなったか。今日は、昨日にも増して冷えるらしい。

でも、カーテンを開けると、朝日が射し込んできた。雪は、止んでいた。

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「行けそうだね」

走るか、走らないか。答えは出た。

しかし、どこへ行くかが問題だ。当初は山間の人吉という町まで走ろうとしていた。しかし、ここは雪の影響が大きく、通行止めになっていた。

となると、鹿児島方面に、海沿いに進むしかない。

今日は87km先の新水俣駅まで自転車で走り、そこから九州新幹線で鹿児島へ向かうことに決めた。

9時過ぎに出発した。青空が見えていたけど、気温は確かに昨日よりも低い。指先の感覚がなくなってくる。

だけど何よりもヒドいのは、路面凍結だった。自転車の走る道(車道の端)が、デコボコとした硬い雪でビッシリと埋まっていたのだ。スピードを出したらひとたまりもない。つるっと滑ってしまう。

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どうしてこうなってしまうのかと思案していたら、理由がわかった。チェーン着用の車が走ることで、雪がデコボコに踏み固められるのだ。昨日はまだ雪は降ったばかりで、かつチェーンを着けている車が少なかったから、猛吹雪でも走ることができた。

良さそうに見えたけど、状況は昨日よりも悪かった。今日は一日、この路面に悩まされた。何度も自転車を押して歩かざるを得ない場所に遭遇して、なかなか進まなかった。

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40km地点、八代市でお昼ご飯。ネギトロ丼に、スパゲッティーの大盛り。

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たっぷりと食べて、午後も戦う。

今度は解けた雪が水たまりとなって、そこを大型トラックが次々と通り抜けていくものだから、横を走るぼくは、ビシャビシャと泥水を浴びることになった。顔から足まで、どんどん汚れていった。

それでも構わない。走り続ける。

今度は山道が始まった。

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路面凍結もしていて、なかなか困難な道のりだった。

だけど着実に登っていった。箱根に比べれば、なんてことはない。

下りに入って、ついにやってしまった。注意して走っていたものの、凍結地帯で滑って転倒してしまった。歩道の雪がクッションとなって、幸い大事には至らなかった。後続車もすぐに止まってくれ、「大丈夫ですか〜?」と声をかけてくれた。

「大丈夫です!すいません!」

「お気をつけて〜」

右足に軽傷を負ったが、構わず前へ進んでいく。

自分でも驚くほど、気持ちはブレなかった。

泥水を浴びようが、転倒しようが、一度目的地を決めたら、最後まで走り抜く。

17時半、新水俣駅に到着した。

駅前にいた男性に「写真撮っていただけますか?」と頼んだら、「I can not speak Japanese」と言われた。

タイから観光でやってきたミンさんは、現地のCanonに勤める方だった。とても親切に、写真を撮ってくれた。

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「今度はタイで、自転車旅をしなよ」

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彼とはFacebookで友達になった。いつか、再会する日が来るかもしれない。

新水俣駅から、九州新幹線に乗って、鹿児島までやってきた。

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駅構内でさつまあげを食べた。

「ツール・ド・和菓子」もした。

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いも焼酎、きびなご、枕崎産のカツオ、鹿児島を堪能した。

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この3日間で260km走った。明日は120km先の宮崎市を目指す。

また勝負の一日になるだろう。

勝っても負けても、自分の限界への挑戦は楽しい。

今はただ、限界まで走り続けたい。

どんな逆境に直面しようとも、呪文のように唱えるだろう。

「それでも、走り続ける」と。

倒れたら、立ち上がればいい。

何度でも、何度でも。

その先に、光がある。

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挑戦は続く。

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