ツール・ド・九州 第4ステージ
鹿児島県鹿児島市〜宮崎県宮崎市
走行距離131km
大寒波のピークは過ぎた。気温も上がってきた。形勢逆転だ。
しっかりと朝食を食べた。本場の薩摩揚げはおいしい。
鹿児島から宮崎まで。120km以上の距離を走り切ることができるのかわからないけど、最後まで走り切りたい。
朝8時半に出発。海沿いに出ると、雪を戴いた桜島がすごい迫力だった。
霧島までの35kmは、桜島を右手に長めながら順調に進んでいった。
問題はそこから先だった。霧島は山に囲まれている。坂道を避けては通れないのだが、その坂がえげつなかった。
登れど登れど、峠に辿り着かない。お昼になってしまったので、坂の途中のそば屋さんで昼食に。まだ宮崎まで90kmある。行けるだろうか。
「ごちそうさまでした」
「ありがとうございました〜」
「あの、この登り坂ってあとどのくらい続くんですか?」
「あと3kmくらいかね〜」
「まだそんなにあるんですか!?」
「そうよ〜。『心臓破りの坂』って呼ばれてますよ」
「もう心臓破れました笑」
「あっはっはっは。がんばってください。登り切れば、都城までは下りですよ」
再び坂道に挑み、ついに峠を越えた。付近のお店から、あんこの良い香りがしてきた。
名物の加治木まんじゅう。「ツール・ド・和菓子」も忘れない。
途中の道の駅では、ご当地のお菓子を見つけた。
「いももち」と「からいも餅」
お芋のお餅?おいしそう。
買い物に来ていた地元のおばちゃんに聞いてみた。
「いももちとからいも餅は、何が違うんですか?」
「いももちの方が、」
「はい」
「うまい」
え!笑 違いについては教えてもらえなかった。
気になったので店員さんにも聞いてみた。
「同じものなんですけど、生産者が異なるので、名前を変えているんです」
なるほど。それでさっきのおばちゃんの回答にも納得がいった。いももちのが、うまいのだ。
また別の道の駅では、「だごまき」というお菓子を見つけた。
「だごってのは、団子のことだよ。団子の中に餡は入ってねえよ。生地に餡が練りこんでんだよ」
いももちも、だごまきも、もちもちでおいしかった。賞味期限が当日だから、ここでしか食べられない。地方の郷土菓子はとても面白い。
15時過ぎ、都城市に着いた。ここからあと50km。しかし平地も束の間。また山道になった。
明日は潰れてもいいから、今日は最後まで走り切りたい。
「もう少しで峠だよ」
いろんな人から応援された。蓄積する疲労がピークに達しつつある。だが、ここで諦めたら、一生後悔しそうだ。なんとしてでも辿り着きたい。
峠を越えた。日が暮れ、どんどん暗くなってきた。宮崎まであと20km。ラストスパートだ。下り道を全力で漕ぎ続けた。
そして
宮崎到着!130km走ってきた。全盛期にも負けない走りだった。ただ、疲労はすごい。
コンビニの店員さんから
「2円のお釣りです。ありがとうございました」
「ごちそうさまでした」
と言ってしまうくらい疲れていた。
宮崎には、昨年チェコの旅で添乗したお客さんが住んでいたので、記念撮影だけした。
宿に荷物を置いてから、商店街をフラフラ歩いていると、立ち呑み屋を見つけた。
端っこに立っていたら、「お兄さん、よかったらこっち来ない?」と仲間に入れてくれた。
「えー!?自転車で九州を一周!?」
「ほえ〜」
「吹雪の中走ってきよったんか」
仕事帰りのおじさんや出張中のお兄さんたちが、薄汚れたぼくを歓迎してくれた。
こうした人の温かさがあるから、日中は孤独でも頑張れる。
挑戦は続く。