山口県・萩へ行ってきた。
この町に住む人々は、誰もが吉田松陰のことを「松陰先生
「ほかの県では松陰先生と呼ばないんですか?」
小さい頃からそう育ってきたから、それを当たり前のこと
松下村塾を見てきた。
吉田松陰は、ここで久坂玄瑞や高杉晋作、伊藤博文らに講
「地を離れて人はなく、人を離れて事なし、ゆえに人事を
論ぜんと欲せばまず地理を見よ」
松陰は、江戸時代きっての旅人だった。空理空論を嫌い、
しかし、幕府の方針を強く非難し、強い主張を持ちつつも、どこか女性のような優しい心や、面倒見の良さを併せ
何かの専門家にはなれない性格だと、自覚していた。生粋
地理を大切にした松陰。ぼくもなぜか昔から、地理が好き
(ここにこんな半島があるんだ。この島へはここからフェ
社会人になって、日本地図から世界地図に変わったが、
(ここにこんな国があるんだ)
と本質はあまり変わっていない。
観光地はあまり好きじゃない。その土地のものにふれた瞬
高校1年のときにサッカー部を辞めてから、放課後にラン
追浜から京急富岡まで、15kmくらい走っていた。最初
一度友達を連れてランニングしたときに、「間違ってるか
「きっとどこかに繋がってるよ」
「間違えたとしても引き返せばいいじゃん」
そう言っても、通じなかった。
でもぼくは、そうして迷いながら、ひとつずつ道を覚えて
自転車旅の楽しさは、知らない道を走ることにある。知ら
その快感を伝えようと思っても、実際にやってもらわない
地理の大切さを強く感じたのは、社会人になって、たまた
日比谷の定食屋に入ってきた、観光中のフランス人家族。
「Where are you from?」と聞いた。
「フランスだよ」
「フランスのどこ?」
「ランスという町だよ」
「どっちのランスですか?」
多分、そんな聞き方をできる人は少ない。ぼくは旅行雑誌
「大聖堂で有名なランスだよ」
「ああ、世界遺産の方ですね」
「よく知っているな」
と、この会話だけで仲良くなった。でもきっとそうなのだ
ぼくだって、もし彼が地元・横須賀のことを知っていたら
様々な土地を訪れることには、人と人を繋ぐ力がある。
「え、◯◯出身なの? あそこの神社、階段きついよね」
「よく知ってるね!」
そういう風に、ぼくは初めて会った人たちと仲良くなって
松陰も、きっとそのことを知っていただろう。
ぼくもまだまだ、旅を続けたい。その先には、人がいる。
挑戦は続く。