自転車でアメリカ西海岸縦断の旅
ツール・ド・西海岸 第13ステージ
ユーカイア(Ukiah)〜 ガーバービル(Garberville)
150km
まずは映像をどうぞ。
今日は長かった。150kmなんて、荷物を背負った自転車旅ではなかなか走らない距離だ。
75km+75kmに分けることも検討していたが、身体の調子もよかったので、前日の夜の判断で150kmに挑戦しようと決めた。宿を予約したら、もう後には引けない。でもこれで一日稼げた。
朝6時半からオープンしていたユーカイアのカフェ「Black Oak Coffee Roasters」は、とても田舎町には似つかわしくないおしゃれなお店だった。バリスタは世界的なコーヒーの選手権で優勝した方らしい。こういうところで飲む朝のコーヒーは格別だ。
長い長い山道が続いた。あと数kmで峠という場所で、後ろのタイヤに異変を感じた。
「あ!パンクしてる!」
なんてこった。よりによってこんな日に。パンクだけはしたくないと思い、小石を丹念に避けながら走ってきたのだが。しかしどれだけ頑張っても、パンクするときはする。
近くに自転車屋さんがあれば、サクッと直してもらえるのだが、次の町まではまだ10kmもある。
確か以前パンクしたのは、2010年、ピレネー山脈の麓を走っているときだった。一応、最低限の修理セットは持ってきたが、久しぶりだからうまく直せるか不安だった。
しかし、やるしかない。直さなければ、前には進めない。
予備のチューブ、タイヤレバー、そして簡易空気入れを取り出し、この最低限の装備だけでなんとか乗り切った。
よし、直った!タイムロスしてしまったが、走れるだけでも幸運だ。慌てずに行こう。
お昼に立ち寄ったレジェット。町だと思ったら、人は住んでいない。全てのレストランが閉店していて、唯一スーパーだけ開いていた。ここでサンドウィッチを買って食べた。
もう100km以上走ってきた。本当にしんどい。残り30km。巨樹の道を進む。
残り1マイル。
着いた〜!
サングラスのところだけ日焼けせず、パンダみたいな顔になってきた。
ただ走っているだけだが、筋肉がついてきた。
レストランでパスタを食べていたら、変なおじさんがやってきて、
「ウィンドブレーカーがほしい。それ、くれないか?」
なんでやねん。変に英語で話すと面倒臭くなりそうだったので、まったく英語がわからないフリをして、全部「え?」「ん?」という顔とジェスチャーを繰り返した。
ついに「わからないのか、そのウィンドブレーカーをくれないかと言ってるんだ!」と勢いが増してきたので、怒った顔で
「ジャパン!!!!」と叫んだら、「OK」と言って握手を求めて去っていった。
スーパーの前にはホームレスの人たちが集まって、買い物客にお金をせがんでいる。
この町は少し危ない。マリファナの臭いもする。暗くなると何があるかわからないので、すぐに部屋に帰った。
危険な町だが、これもある意味、貴重な体験だ。