2010 ツール・ド・ヨーロッパ(スポンサーを集めて自転車で西ヨーロッパ一周の旅) ドイツ

【自転車旅】ツール・ド・ヨーロッパ(56)ヴォルフスブルク~シュテンダール

投稿日:2010年9月29日 更新日:

最後は気迫が違うのだ。

ツール・ド・ヨーロッパ
第56ステージ
ヴォルフスブルク~シュテンダール
93km

夢!冒険!ちゃいにっき!~自転車で西ヨーロッパ一周の旅~

ヴォルフスブルクでお世話になった白井さんご夫妻、本当にありがとうございました!白井さんはサッカー日本代表の長谷部選手とも鍋をつついたことがあるようで、話を聞いていると羨ましい限りでした。

さあ、朝9時に出発。極寒。寒さで足先が痺れて感覚がなかった。

夢!冒険!ちゃいにっき!~自転車で西ヨーロッパ一周の旅~

今日走った場所は、ただ草原が広がっているだけ。大きな街もなかった。

平原を無心で走った。

お昼過ぎ、小さな街に入った。ちょうどいいからお昼にしようと思ったが、どこのレストランも開いていない。

夢!冒険!ちゃいにっき!~自転車で西ヨーロッパ一周の旅~

スーパーしかなかったので、チョコとバナナだけ買って食べた。1.7ユーロのお昼だった。HARIBOの安売りをしていたが、重くなるのでベルリンまで我慢した。

一度休むと、一気に体が冷える。とても外に出られなかったので、レジの後ろでチョコを食べた。それくらい寒かった。

再出発しても、しばらくは体が温まらない。早く宿に着きたい・・・

ここは旧東ドイツと旧西ドイツの境界らしい。看板があった。

今日は本当に何も考えなかった。写真もほとんど撮らなかった。けど楽しかった。

純粋に自転車旅をしたなぁ。いつもは「今日のブログは何を書こうかな」と、ネタ探しをするんだけど、それもしなかった。

93km走り切って、シュテンダールに着いた。

夢!冒険!ちゃいにっき!~自転車で西ヨーロッパ一周の旅~

必死に走った。雄叫び。ワールドカップでFK決めた後の本田圭祐(笑)

宿に入って、シャワー。はぁー・・・お湯が気持ちいい・・・生き返る。

シュテンダールはまったく観光地ではない、ただの小さな街だ。

夢!冒険!ちゃいにっき!~自転車で西ヨーロッパ一周の旅~

一応、街を一周してきたが、やはり見所は特にない。けど、居心地は悪くない。

中心地に少しお店があるが、住民しかいないからとても静かだ。学校から高校生がわんさか出てきた。どうやら下校時間らしい。ドイツの日常を感じる。観光ではないが、これはこれでいいな。

夢!冒険!ちゃいにっき!~自転車で西ヨーロッパ一周の旅~

話は変わるが、2006年のワールドカップを最後にフランスのジダンが引退した。34歳の彼は、全盛期のプレーを取り戻し大会MVPを獲得した。

その引退のかかった最後のプレーを、どこかのテレビ局が「ラストダンス」と表現したのを覚えている。ぼくはこの表現を気に入った。まさしく、彼は踊っていた。

囲まれてもボールを奪われない。敵のタックルをするりとかわす。ジダンのプレーは、まるで踊っているようだった。

また、彼は最後まで、自分の舞台を「踊り」続けた。つまり最後まで、ジダンらしくあり続けた。

人には、自分だけに用意された舞台がある。ジダンにはジダンの舞台があった。ぼくにもぼくだけの舞台がある。そういうことを、自転車旅を通じて学んだ気がする。

今までは、「自分になくて、他人にあるもの」に目を奪われていた。「あいつはあんなことができる。すごいなあ。ぼくには無理だ。」 そのせいで、他人を羨ましく思ったり、「自分はなんてダメな人間なんだ」と思ったりもした。

だけど、人は人だ。同じじゃなくてもいいと思えるようになった。ぼくはぼくらしくいればいい。どうせなら、「自分」を極めてやろう、と。 迷ったら、武者小路実篤のこの言葉が勇気を与えてくれる。

「この道より我を生かす道なし この道をゆく」

この自転車旅は、ぼくにしかできない。もっと速く走れる人はいっぱいいる。もっと文章のうまい人はいっぱいいる。だけど、ぼくにしか走れない速度。ぼくにしか書けない文章。ようやく見つけた、ぼくの舞台だった。この2ヶ月間、必死に踊り続けた。

ジダンのプレーには「これが最後だ」という気迫がこもっていた。ぼくはテレビ越しに鳥肌が立った。34歳のおじさんは輝いていた。

明日、ベルリンまで走ってこの旅を終える。ベルリンまで120km。夕方までに着かなければいけないので、結構必死だ。朝8時に出発しようと思う。

最後の力を振り絞る。それがぼくのラストダンス。ジダンのように踊りたい。

-2010 ツール・ド・ヨーロッパ(スポンサーを集めて自転車で西ヨーロッパ一周の旅), ドイツ

執筆者:

関連記事

バッハの本が運んでくれたエピソード

クラシック好きのマスターが営む近所の喫茶店「珈琲の詩」に置いてあった本、おもしろくて一気読みしました。 作曲家としてのバッハの偉大さが広まったのは、彼の死後のことでした。生前の彼は「世界的な教会オルガ …

【自転車旅】ツール・ド・ヨーロッパ(36)ジェノヴァ~モデナ

振り回されているのか、それとも流れに乗れているのかわからない。 ツール・ド・ヨーロッパ 第36ステージ ジェノヴァ~モデナ 結局次の朝も、ジェノヴァは雨と風が強かった。今日は電車での移動日にすることに …

【自転車旅】ツール・ド・ヨーロッパ(15)マンチェスター~ロンドン~リスボン

旅が始まって、二週間が過ぎた。ぼくは楽しい旅ブログを書きたかったから、一日の出来事のうち、良かったことだけを抜き出してブログに書いていた。しかし今は、どうしても精神的なギャップを感じてしまう。楽しいこ …

【自転車旅】ツール・ド・ヨーロッパ(4)ボン

ツール・ド・ヨーロッパ 第4ステージ ボン 36.5km 泊まらせてもらった作見さんに、ボンを案内してもらう。自転車で周遊することにした。部屋に荷物を置いておけるので、今日は軽量で済む。荷物を整理して …

「シャガールが遺した青の世界」ザンクト・シュテファン教会(ドイツ)

「空の端の方に一筋青い輪郭があらわれ、それが髪に滲むインクのようにゆっくりとまわりに広がっていった。それは世界じゅうの青という青を集めて、そのなかから誰が見ても青だというものだけを抜き出してひとつにし …