インタビュー 読んでみた

「大切なのは、情熱を伝えることです」二十歳の世界的冒険家・南谷真鈴さんの生き方

投稿日:2017年3月9日 更新日:

現役早大生の登山家・南谷真鈴さんは、二十歳にして、世界的な冒険家の仲間入りをしている。

2015年1月3日(アコンカグア・南米最高峰登頂)から2016年7月4日(デナリ・北米最高峰登頂)というわずか1年半の間に、世界七大陸最高峰をすべて踏破した。2016年5月23日、彼女がエベレストを登ると、そのニュースは瞬く間に日本中に広がった。エベレスト登頂の日本最年少記録。

実際に会うまで、10歳も離れた南谷さんの人間性を興味深く思っていた。いったいどんな方なんだろうか。勢いだけで登ってしまったのだろうか。それとも緻密な計算やトレーニングをきちっとする方なのだろうか。一過性のものではなく、今後もさらに活躍しそうな人物なのだろうか・・・など。

細かな話は、すべては聞けなかった。しかし、様々なエピソードや、話の行間から垣間見られた人間性は、ぼくがこれまで出会ってきた人たちの中でも群を抜いていた。これまでの成功は、決して偶然ではなく、彼女の実力だと思った。

「登山のために半年休学していた分を取り戻すべく、本来一年かけて取る単位を、半年で取らなくてはいけません。だから朝3時とか4時に起きて皇居を10km走ったり、両立しながらトレーニングをしています」

「実績も何もない頃、それでも『こういうことをやるので新聞に載せてください』と新聞社を回って情熱をぶつけました。そしたら東京新聞と読売新聞が記事にしてくれました。その記事を読んだ見知らぬおばあさんが、『私はもう山を登れないけど、代わりに登ってきて』と資金を提供してくれ、それで道が開けたんです。南米最高峰アコンカグアを登ることができ、そこから七大陸最高峰への道が始まりました。大切なのは、情熱を伝えることです」

情熱、行動力、ストイックさ、明るさ。リーダーが本質的に持ち合わせている要素を、すべて兼ね備えているような気がした。

「次の目標は、2017年4月から、スキーで北極点へ行くことです。七大陸最高峰、南極点、北極点のすべてを達成すると、『冒険家グランドスラム』というものに認定され、私は既に南極点へ行っているので、あと北極点に行けば、世界最年少記録を作ることができるんです」

彼女はきっと成し遂げる。そういう運も、ちゃんと持っている。

帰り道、しばらく興奮が止まなかった。気がつけば、「ぼくも挑戦したい」と煮立つようにふつふつとした気持ちを抱いていた。挑戦者の背中は、最も自然な形で挑戦者を増やすのだろう。

このブログで何度も引用している、Twitter創業者ジャック・ドーシーの言葉。

「覚えておいてください、あなたが未来を作るのです。あなたの頭の中に様々なアイデアがあり、それをあなたがご自身のために世に生み出すのです。それがあなたの使命です。自分が見たいものをこの世の中に生み出してください。賭けに出れば負けることもあるでしょう。その負けに囚われず、すぐにまた勝負に戻ってください。物事の解釈はあなた次第です。世の中を描いてください」

そして、ジャズ・ピアニストのセロニアス・モンクも同様のことを言っている。

「私が言いたいのは、君のやりたいように演奏すればいいということだ。世間が何を求めているかなんて、そんなことは考えなくていい。演奏したいように演奏し、君のやっていることを世間に理解させればいいんだ。たとえ15年、20年かかったとしてもだ」

IT起業家でもないし、ピアニストでもないけれど、自分の内側にあるもの、信じるものをこの世界に思いきり表現していきたい。挑戦者となることで、世の中に良い影響を与えていきたい。挑戦者を増やす背中になりたい。

「自分自身と他人のために自分を興味深く持ち続けることが出来る人々がいなければ、世界は沈滞してしまう。彼らによって世界はとても美しくなる。画家や彫刻家である必要はない。人はどんな仕事を通じてもアーティストになれる。外に答えを求めるのではなく、自身の仕事の中にアートを見出すことができるか否か、それが大切だ」

南谷真鈴 冒険の書 LIVING WITH ADVENTURE 英訳付
南谷 真鈴
山と渓谷社 (2016-12-03)
売り上げランキング: 59,819

-インタビュー, 読んでみた
-

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

異才の数学者、岡潔「人の情緒は固有のメロディーで、その中に流れと彩りと輝きがある」

年に1回は、風邪を引く。 元気なときは、書きたいことが頭の中にどんどん浮かんでくるものだけど、疲れているときや体調が悪いときは、なかなか文章が出てこない。 他人の頭を覗いたことはないけれど、人と比べて …

「5回に1回は、スタバじゃなくて台湾茶を」 台湾茶専門店「ゴンチャ」日本一号店 店長 志田佳絵さん

台湾で生まれ、世界に1000店舗以上ある台湾茶専門店「ゴンチャ(Gong cha=貢茶)」が、今年9月、日本初上陸を果たしました。 記念すべき一号店は、原宿・表参道エリアにオープン。そして店長の志田佳 …

My Eyes Tokyo 代表・徳橋功さんが照らす光

 -01- アメリカで得たもの 「もう20代も後半。大きなチャレンジをするなら、今しかない」 都内のテレビ局に勤めていた徳橋功さんは、決断した。アメリカへ渡り、カリフォルニア州のフレズノという町のテレ …

ユーザーの味覚を学習するグルメサイト「SARAH」代表取締役 高橋洋太さん

新進気鋭のグルメサイト「SARAH」のオフィスを訪れました。まだ今年生まれたばかりのサービスですが、このサービスのすごいのところは、ユーザーの味覚を学習し、自分好みのメニューを提案してくれる点にありま …

「人の好奇心は誰にも否定できない」ぼくがカオスから学んだこと

「家を出るとき、右足から出るか、左足から出るかで、その後の人生は変わるのだろうか」 高校生の頃、駅へ向かって歩きながら、そのことについて真剣に考えたことがある。右足の一歩と左足の一歩、歩幅はわずかに異 …