流れに逆らわず・・・
ツール・ド・ヨーロッパ
第44ステージ
ヴェネチア~パドヴァ
52km
ぼくが乗っている自転車は、BASSOというイタリアのメーカーの製品だ。
そのBASSOは、イタリアのヴィチェンツァというところに本社がある。ヴェネチアからそんなに遠くないので、今日はそこまで行くつもりだった。
実は、BASSOの日本輸入元である株式会社ジョブインターナショナル さんの高橋社長に、「BASSO社を訪ねたい」と言ったら、BASSO社の社長の連絡先を教えてくださった。
ヴィチェンツァに向けて出発する今日の朝、Mr.BASSO(社長)に電話してみた。
「My name is Yota Nakamura, from Japan. ・・・あなたに会いたいんです。」 と。
すると、
「今日は会社にいないんだ。明日も予定がある。明後日(18日)から、パドヴァで自転車の展示会があってね。」
パドヴァは、ヴェネツィアとヴィチェンツァの間にある街。自転車の展示会というのは、日本でいう東京モーターショーの自転車版みたいなものらしい。
う~ん。。興味はあるけど、もうあまり時間がないし、18日にはイタリアを抜けるつもりでいた。
しかし、
「展示会に招待するから来なさい」
と言われ、悩んだ。もちろん「ちょっと時間がないので行けないです」と言うこともできたんだけど、やっぱり社長には会ってみたいし、考えてみればそんなに大きな自転車の展示会が今自分のいる場所で行われるなんて、偶然という言葉では説明がつかない気がした。「これが『流れ』というものか。乗ってみるか」と、そう思った。
「わかりました。行きます。」
「よし。それなら18日の朝にまた私に電話しなさい」
ということで、ぼくの予定は大きく変わった。ヴィチェンツァではなく、パドヴァへ向かった。
ヴェネチアを去るのが淋しい。
サンマルコ寺院の中も入っていないし、まだまだたくさん見たいものがあった。必ずまた来ようと誓った。
イタリア本土とヴェネチアを結ぶ、リベルタ橋。
なんという長さ。先が見えない。
ここを自転車で走るのは気持ち良かった。
パドヴァまでの道のりもなかなか良かった。ひたすら川沿いの道を進む。北イタリアも時間があればじっくり観光してみたかったな。
小さな街の教会。
そしてパドヴァ到着。結構都会だ。
たまたま走っていて、自転車の展示会(EXPOBICI)の会場を見つけた。やっぱり何か縁があるな。
急遽予定を変更して、今日は少ししか走らなかったんだけど、パドヴァに着いて「今日あまり無理をしないで良かった」と心の隅で思った。というのは、少し体の様子が悪い。
朝、顔を洗ったときに鼻血が出たり、2日前から首筋に大きな腫れ物ができている。この腫れ物が少し厄介で、どうやら粉瘤(ふんりゅう)という皮膚腫瘍らしい。皮膚の中に膿が溜まって、放っておくとどんどん大きくなるらしい。ネットで調べたら「こぶし大の大きさまでなることもある」と書いてあってビックリ。そんなのたまらない。
アイルトン・セナは、事故死するレースの直前、精神的に不安定な状態に陥り、「走りたくない」と、心の内を身内にもらしていたらしい。もしかしたら、何か予感がしたのかもしれない。やはり異変を感じたら無理はしない方が良さそうだ。
幸いパドヴァには病院がある。そこに明日の朝行ってみるつもりだ。
また、パドヴァには意外な世界遺産もある。
これもMr.BASSOのおかげだ。来るはずのなかった街で、どんな出来事が待っているのだろうか・・・