エッセイ 日本

カボスのおじさん

投稿日:

そのお店でラーメンを食べるのを楽しみにしていたから、「ガラガラ」とドアを開けた矢先、「悪いな、今日はもう店閉めちゃったんだ」と言われたときはショックだった。

「そうでしたか」

扉を閉めかけたぼくを、おじさんは呼び止めた。

「お前さん、どこから来たんだ」

ぼくが真っ黒に焼けていたからか、自転車のグローブをつけていたからか、理由はわからないけど、旅をしていることはわかったらしい。

「神奈川です」

少し沈黙が続いて、「はぁ〜」というため息が微かに聞こえた。

「ちょっと待ってろ」

黙って待っていると、何かが入ったビニール袋を渡してくれた。

「これ、持ってけ。疲れたときは、カボスが効くだろ」

半分にカットされたカボスがたくさん入っていた。

自転車で去っていくぼくを、「気ぃつけてけよ〜」と手を振って見送ってくれた。

天草という地名を目にすると、いつもおじさんのことを思い出す。

今度はラーメンを食べたいな。

-エッセイ, 日本
-

執筆者:

関連記事

【9月19日(火)朝】広尾のお寺で話します!

「お寺ステイ」という活動をしている友人の時岡碧さんからお声がかかり、9月19日(火)の朝、広尾のお寺で少しだけお話をさせていただくことになりました。 今日は永田町GRIDで、打ち合わせをしてきました。 …

【全ビール写真で振り返る】53杯のクラフトビールを注ぎながら東海道五十三次を歩いてみた

2017年1月、東京・日本橋から大阪まで、23日間かけて総距離592kmを歩いて移動した。旅の詳細はこちらの記事をご覧いただきたい。今回は、旅の途中で飲んだクラフトビールを全て写真で公開する。 「東海 …

益子焼を仕入れました

先日、陶器の里・栃木県益子町を訪ね、職人さんの工房へ行きました。お話を伺ったのは、小林雄一さん・西山奈津さんご夫婦。 それぞれが陶芸家として作品(芸術としての)を作っていますが、食器を作るときは「NK …

長命寺と道明寺。桜餅の歴史と、ジョブズも愛した和菓子の話

世界を旅して、各地の郷土菓子を見渡してみても、四季折々のお菓子がこんなに存在するのは、日本のくらいのものだと気付かされます。以前、ユーラシア大陸を自転車で横断した郷土菓子研究社・林周作さんの記事を書き …

【ツール・ド・クラフトビール 第1ステージ】茅ヶ崎で奇跡が連発!

アメリカ人Danさんと、クラフトビールを巡る自転車旅! ツール・ド・クラフトビール 第1ステージ 二子玉川 〜 川崎 〜 鎌倉〜 茅ヶ崎 70km 旅の経緯と概要はこちら! ・ ・ ・ 旅の相棒、Da …