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司馬遼太郎さんが与えてくれた視点

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『項羽と劉邦』も、中巻を読み終え、ようやく下巻。これは、初めて中国大陸を統一した秦の始皇帝が死んだ後、劉邦が項羽を破り、漢帝国を成立させるまでの話です。

ぼくは地名が出るたび、それが中国大陸のどこなのか、いちいち地図上で確認し、位置関係を把握しながら読むから、時間がかかります。

しかし、当然ながら読む以上に、この長大な作品を書くのには、ものすごい労力と膨大な時間が必要とされます。改めて、司馬遼太郎さんはすごい人物だと思わざるを得ません。

彼からは多大な影響を受けています。

たとえば、東海道五十三次を歩いたのも、彼の影響です。大学1年か2年の頃、新撰組の活躍を描いた『燃えよ剣』を読みました。江戸から京都へ歩く幕末の志士たちを見ていて、「そうか、ほんの150年前までは、みんな東海道を歩いていたのか」という当たり前の事実に気付きました。

「いとも簡単に歩いているけど、どのくらい大変なことなんだろう?」

その疑問を晴らさないと気が済まない、いつか自分の足で東海道を歩いてみよう、とチャンスを伺い、ようやく実現したのが2017年のことでした。

数多くの優れた作品を遺し、何を持っても司馬さんには敵いません。ただ、唯一彼になくてぼくにあるものは、「今を生きている」ということです。

それは、小学校の国語の教科書にも載っている『二十一世紀に生きる君たちへ』に書いてあります。その文章は、こんな風に始まります。

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私は、歴史小説を書いてきた。もともと歴史が好きなのである。両親を愛するようにして、歴史を愛している。歴史とはなんでしょう、と聞かれるとき、「それは、大きな世界です。かつて存在した何億という人生がそこにつめこまれている世界なのです。」と、答えることにしている。

私には、幸い、この世にたくさんのすばらしい友人がいる。歴史のなかにもいる。そこには、この世では求めがたいほどにすばらしい人たちがいて、私の日常を、はげましたり、なぐさめたりしてくれているのである。

だから、私は少なくとも2千年以上の時間の中を、生きているようなものだと思っている。この楽しさは — もし君たちさえそう望むなら — おすそ分けしてあげたいほどである。

ただ、さびしく思うことがある。 私がもっていなくて、君たちだけが持っている大きなものがある。未来というものである。 私の人生は、すでに持ち時間が少ない。例えば、二十一世紀というものを見ることができないにちがいない。

君たちは、ちがう。二十一世紀をたっぷり見ることができるばかりか、そのかがやかしいにない手でもある。 もし、「未来」という街角で、私が君たちを呼び止めることができたら、どんなにいいだろう。

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司馬さんが新たな作品に取り掛かるとき、膨大な資料収集をしたことで知られ、そのテーマについての資料本が神田神保町の古本屋街から消えるという「伝説」さえ残っています。

そのくらい歴史を愛した人物が、21世紀をどのような視点で見つめ、また作品を描くなら誰を主人公にするのか、願いが叶うなら見てみたかった。

だけどその代わり、自分自身がそういう視点でこの時代と人を見ていたい。彼は歴史小説を通して、読み手に「視点」を与えてくれているのだと、今書きながら思いました。

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