読んでみた

フィジカルな体験が知的なアウトプットに与える影響は極めて大きい

投稿日:2017年2月28日 更新日:

早朝、雑念のない頭で、しーんと冷たい河川敷を走っていると、最近見たもの、聞いたこと、感じたこと、バラバラに体験したひとつひとつの物事が、一本の線でつながれて、ひとつの物語性を帯びてくる感覚がある。そのときの幸福感というのは、何物にも代えがたいもので、それがぼくが小さい頃からランニングを続けている理由のひとつになっている。

小学生高学年の頃から、走る習慣がある。当時、真ん中の兄が大学の駅伝ランナーだったので、ときどき一緒に走った。走る姿勢をよく正された。高校生になって、半年も経たずにサッカー部を辞めたあと、運動不足になるのが嫌で、放課後にひとりで10~15kmランニングをしていた。今考えれば、変わった高校生活だった。

帰宅部なのに、友達と帰り道に遊ぶこともせず、他の運動部員がグラウンドで汗を流しているときに、ぼくはひとりで野島や八景島シーパラダイスやときには京急富岡の方まで、道に迷いながら、ランニングをしていた。夕日が美しくて感動したこともよく覚えている。

大学生になって、2限の授業をよく、ランニングのために欠席した。それくらい、ぼくにとって走ることは重要なことだった。

走ることがもたらす効用を見事に表現してくれたのは、村上春樹さんだった。『走ることについて語るときに僕の語ること』、それから割と最近のエッセイである『職業としての小説家』を読んだとき、自分の感覚は間違っていなかったと、言いようのない感動があった。

フィジカルな体験が知的なアウトプットに与える影響は極めて大きい、とぼくは感じている。村上さんもきっと、同じようなことを思っているに違いない。

職業としての小説家 (新潮文庫)
村上 春樹
新潮社 (2016-09-28)
売り上げランキング: 1,539
走ることについて語るときに僕の語ること (文春文庫)
村上 春樹
文藝春秋
売り上げランキング: 1,977

-読んでみた
-

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

「大切なのは、情熱を伝えることです」二十歳の世界的冒険家・南谷真鈴さんの生き方

現役早大生の登山家・南谷真鈴さんは、二十歳にして、世界的な冒険家の仲間入りをしている。 2015年1月3日(アコンカグア・南米最高峰登頂)から2016年7月4日(デナリ・北米最高峰登頂)というわずか1 …

夜9時を過ぎたらタクシーで帰る? 中山マコトさんが唱える「逆説」の思考法

2001年に独立されて以来、フリーの広告・販促プランナーやコピーライターとして活躍されている中山マコトさんは、安月給だったサラリーマン時代から、夜9時を過ぎたら自腹を切ってでもタクシーで帰るようにして …

「行動を伴わない知識は必要ない」司馬遼太郎『峠』に学ぶ河井継之助の考え方

寒さが、ときどき妙に心地いい。 冬の寒さで思い出すのが、大学3年生のクリスマスだ。周りがエントリーシートがなんとかとか言っている時期、ぼくはその言葉の意味もよくわからなかった。どんな会社に就職するのが …

【奇跡は意図的に起こせる】シンクロニシティを起こす条件

ミャンマーから帰ってきてこの数日間、なんだか無気力状態が続いていた。最初は疲労が原因だと思ったが、休んでもまだ気力が湧かない。たいして仕事もしていないのに、どうやら精神的に疲れているらしい。 フリーラ …

福沢諭吉がアメリカの文明に驚かなかった理由

アメリカの文明に驚かなかった福沢諭吉 勝海舟や福沢諭吉がアメリカ西海岸に辿り着いたのは、1860年のこと。 エジソンが電球を発明するより19年も前のことで、まだ電灯の時代はきていない。しかし、電信はあ …