2016年5月、二子玉川 蔦屋家電にて、写真家・松井文さんの写真展「Sentimenti」が開催された。会場でご本人にお話を伺った。
——いつから写真を撮っていたんですか?
「小学生の頃ですね。母と共有していた携帯電話のカメラで、あちこち撮っているうちに写真が好きになりました。そのうちデジカメや一眼レフを買って、勉強もして、高性能なものを追い求めてきたのですが、21歳のときにライカのカメラを初めて使ってみて、衝撃を受けました」
——どうしてですか?
「それまでは、高性能なカメラであればあるほど、良い写真が撮れると信じてきたんです。国産メーカーの一眼レフは、スペックも良いし、よく撮れます。でも、ライカの方が、味のある写真が撮れるんです。
それに、私が撮りたいのは、その瞬間のリアルな感情でした。そのときに必要なのは、ハイスペックな性能のカメラよりも、『撮られたくなるカメラ』でした。
今回、イタリアのフィレンツェとローマに撮影に行ってきましたが、私がライカを構えると街の人々が向こうから手を振ってくれたり、笑顔を見せてくれるのです。中には指をさして『撮ってくれ』と言ってくるおじいさんもいました。
そうやって撮った写真の数々は、見事にその場の雰囲気や空気感を切り取っていて、ライカのすごさを実感しました」
21歳の頃にライカと出会い、「光と影が魅せる一瞬の時間の記憶」と題したモノクロ作品を発表。見た目のイメージと裏腹な力強い描写の作品が、ライカ写真家・伊﨑真一さん(Hobby Izaki)の目に止まり、彼に弟子入りした。この出会いがなければ、彼女は今、写真家として活動していなかったかもしれない。
展示してあるのは10点ほどだが、それでも十分良かった。モノクロの写真に、こんなに惹かれるとは思ってもいなかった。まだ23歳。彼女の持つ豊かな感性に注目していたい。
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