ブログ

自主性と記憶力

投稿日:2016年2月26日 更新日:

いつも二人で旅行へ行く、というご友人同士のお客様がいらっしゃる。どちらも80歳近い。そのひとりが、それはもうツアー中よく喋る。あの国のあれがどうだった、この国でこんなことがあって大変だった、と旅の思い出話が止まらない。

寝ているとき以外は喋っているんじゃないか。でも、実に細かいことまでよく覚えていて、なおかつ思わず「へぇ~」と言ってしまうくらい、こちらが聞き入ってしまう。

何も考えずに、ただガイドさんの説明を聞いているだけの人は、きっとここまで覚えていない。事実このお客さんの相方は、「そうだっけ? あんたよくそんなこと覚えているわね」が口癖なのだ。

そしてまた、現在の観光に対しても、話が止まらない。常に思考している。

「あの駐車場の上の飾りは何?」

「あの鳥はあまり見かけないけど、なんていう鳥?」

「どうしてこんな形をしているの?」

「この料理はどういう風にして作るの?何が入っているの?」

とにかくガイドに聞きまくる。よくそんな質問思いつくな、ということまで聞く。

しかしその質問のおかげで、しばしばグループ全体が恩恵を受ける。ガイドさんが、

「よく気づきましたね。あれは、ツバメ除けなんです」

「へぇー!あれがツバメ除けなんだ」と一同は学ぶ。

ぼくも学ぶ。そして見渡すと、どこの家にもツバメ除けがあった。なるほど、この町にはツバメが多くて、町の人が困っているのだ、ということがわかる。

どうでもいいことかもしれない。しかし人間の深みは、こんな些細な知識の積み重ねのうえに、滲みでてくるものだと思う。彼女のおかげで、ひとつ学べた。

「この町には、ツバメが多いんだよ。ほら、あそこにツバメ除けがあるでしょ」と、いつかまた萩へ来たときには、同行者に説明できそうだ。

彼女は、好奇心がすごい。その好奇心ゆえの、自発性がすごい。とにかく疑問を口にし、できる限りのことを学びとして回収する。だから、記憶力がすごいのだ。自ら疑問に思って、自ら尋ねて、自ら学んだことだから、どんなに昔のことでも覚えているのだろう。

彼女の場合、先に自分の中に疑問を用意している。そのうえで、ガイドさんの話を聞くから、吸収力がすごい。聞いたことを本当によく理解している。記憶力は年齢に反比例しそうだけど、彼女を見ていると、記憶力は自発性に比例するのではないか、と思わされる。

生きる姿勢を見習いたい。

12765620_1105533789486875_2112079082_o

挑戦は続く。

-ブログ

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

大学時代の反省

自分よりも若い人と接していると、「自分がそのくらいの年齢のとき、何を考えて生きていたか」と無意識に我が身を振り返り、大抵は反省する羽目になる。 4月から始まる大学生活に、胸を踊らせる高校の卒業生たちと …

いつまでも残したい、日本の美しさ

日本の文化には、どんなことにも、「美意識」が根底に息づいている。 色であったり、音であったり、普段の生活や自然、歴史と見事なまでに調和して豊かさを生み出している。 風土に根ざした人々の営みが築き上げて …

「アラスカからニューヨークまで、自転車で」学生冒険家の二人

「中村さんが学生時代に作った旅の企画書、うちの大学の経営学部で、授業の題材として使われていますよ」 そう教えてくれたのは、学生冒険家の二人でした。 立命館大学3年生の杉田親次朗さんと江口祥平さんです。 …

プロライター契約と副編集長就任のお知らせ

しばらくブログの更新が滞っていましたが、このたび、ソフトバンク株式会社の新規事業戦略室に、プロライターとして所属することになりました。 新規事業戦略室では、「ビジネスの明日を照らす」というコンセプトの …

人材育成事業「BEYOND Tomorrow」の活動

今年1月、チェリオコーポレーション専務取締役の菅さんにお誘いいただいたイベントで、一般財団法人 教育支援グローバル基金の理事を務める坪内南さんと知り合いました。 そのイベントで坪内さんから「うちで働き …