オーストリア 記憶の風景

インスブルックの小さな教会

投稿日:2017年2月26日 更新日:

これまでに、たくさんの国を訪れてきた。せっかく色んな場所を見てきたのだから、「何か旅のコラムを書いてみたい」と、以前から思っていた。

でも、おすすめの街などを紹介しようとすると、「この大聖堂は何年に建てられて…」とか、「街は世界遺産に登録されていて…」とか、どうしてもガイドブックのような文章になってしまう。これでは面白みがないし、臨場感に欠ける。

「もっと肩肘張らない、旅のコラムが書きたい」。そう思った瞬間、旅先で驚いたことやふと感じたことなど、些細なエピソードが次々と浮かんできた。どれも小さな記憶ではあるけれど、生きた風景として、今も心の中にある。そんな「記憶の風景」を、少しずつ紹介していこうと決めた。

_____________________________________________

旅行会社に入社し、海外添乗員として初めて訪れた街が、オーストリアのインスブルックだった。滞在型のツアーだったから、一週間以上をこの街で過ごした。長く滞在していると、意識は徐々に旅行者から生活者へと変わっていく。

ある夜、小さな教会の横を通り過ぎると、建物の中からかすかに歌声が聞こえてきた。窓を覗くと、数名の男女が賛美歌の練習をしていた。きっと日曜のミサで歌うのだろう。

普通、観光客は完成させられたもの、整ったものを見る。街の素顔は、時間をかけないと見えてこないのかもしれない。インスブルックの人たちにとってはとくになんでもない日常の風景が、ぼくにはとても新鮮に映った。

海外国内ツアーコンダクター募集!【旅行綜研】

-オーストリア, 記憶の風景

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

ブルガリアの蜂の巣、ラトビアの花粉

ブルガリアで驚いたのは、ホテルの朝食会場に、蜂の巣が置かれていたことだ。 専用の器具を使って削り取り、ヨーグルトに入れた。ビックリしたけど、これがうまい。 一方、バルト三国で一番の大都会である、ラトビ …

カレーリャのスイミー

その日ぼくは、バルセロナから自転車を漕ぎ出して、北に110km先のジローナという町を目指していた。 右手には美しい地中海が広がる。8月でも、日本のような湿気はない。突き抜ける風が爽快だった。 すぐ横を …

【これぞチロルの風景】SLツィラータール鉄道とペンケン山(オーストリア)

オーストリアのチロル州に、インスブルックというハプスブルク家ゆかりの古都がある。2011年から2013年の夏は、毎年この町に滞在し、様々な場所を訪問して過ごしていた。それはもう居心地の良い町で、1ヶ月 …

【ゲーテが「生きた絵本」と称えた町】南ドイツ・ミッテンヴァルト

南ドイツのミッテンヴァルトは、ドイツアルプスに抱かれた小さな田舎町だが、毎年多くの観光客が訪れる。 この町が有名な理由は2つある。ひとつは、「ヴァイオリンの町」として。オーバーバイエルン地方で最も美し …

【GWが見頃】美しきネモフィラ。茨城県・ひたち海浜公園に行ってみた!

2014年4月27日のことだが、国営ひたち海浜公園を友人と自転車で訪れた。二子玉川から1泊2日の旅だった(初日は土浦泊)。 2日目、混雑が予想されたので、開園時間である9時半までに着きたいと思い、必死 …