「高校生のとき、友達のお父さんが東京のブルガリア大使館で働いていたんです。彼がたまにブルガリアに戻ってきたときに、日本のお土産をくれるんですが、その中に、喜多川歌麿の絵が描かれたカレンダーがありました。『えー⁉︎なんだろうこの絵は』ってすごく衝撃を受けました。それで、日本に興味が湧いて、ソフィア大学の日本語学科で勉強しました」
「ソフィア大学に日本語学科なんてあるんですか。ひと学年で何人くらいいたんですか?」
「20人くらいですね。今は小学校から日本語を教えているところもありますよ」
「えー、小学校から。どうして?需要があるんですか?」
「やっぱり、今の子どもたちは、日本の漫画が大好きだから、興味を持っている人も多いと思いますよ」
「スネジャーナさんが、初めて日本に来たのはいつだったんですか?」
「23歳のときでした。でも、勉強した日本語はあんまり役に立たなくて、『全然日本のこと知らなかった』って思いました。それで、また勉強をしました」
「実際に日本に来てみて、何かカルチャーショックはありましたか?」
「それが、不思議なことに、全然なかったんですよ。山手線に乗っているとき、小さな子どもが『ママ、外国人怖い』って泣いてたんですけど、私はどこに外国人がいるんだろうって周りを見渡してたんです。自分が外国人だということも忘れるくらい、日本に自然に溶け込んでいたんです」
「よっぽど日本が合っていたんでしょうね」
「そうですよ。だから日本からブルガリアに戻ると、いつも寂しくなります。でも、私がこれまで日本に案内してきたブルガリア人も、みんな同じことを言いますよ。日本は何もかも綺麗で、整っているのに、どうしてブルガリアは・・・って」
「そうなんですか」
「中村さんのことを言うわけではないですが、日本の若い人たちは、もっと日本の歴史とか文化を勉強しなくてはいけませんよ。みんな知らなすぎるでしょう。それと、今回のお客さんたちのような年齢の方たちが、戦後必死に頑張って、今の日本を築いてきたわけだから、その恩恵を忘れてはならないですよ。日本が好きだから、こういうこと言ってるんです。
これからの日本を作っていくのはあなたたちですよ。中村さん、頑張ってください」