文章術 読んでみた

全ての人に勧めたい、「書く技術」を伝える名著『20歳の自分に受けさせたい文章講義』

投稿日:2017年9月28日 更新日:

2013年の秋、代官山の蔦屋書店で、『20歳の自分に受けさせたい文章講義』という本をたまたま手に取った。

ぼくの職業は、フリーランスのライターである。22歳の頃にハッキリと、「将来は書く仕事をしたい」と思って、それ以来7年間、ブログや雑誌やメディアで書き続けてきた。

しかし、これまで文章術に関する本は、ほとんど読んだことがない。正確に言えば、「最後まで読めた試しがない」。

いくつか手に取ったことはあるのだが、なんだか退屈で、説教くさくて、「おもしろい」と思ったことがなかった。それよりも、司馬遼太郎や村上春樹の小説を読みながら、「この書き出しかっこいいな〜」とか、「なんでこんな比喩が思いつくんだろう・・・」とか、書き手の目線で作品を味わっていた方が、よっぽど書き方の勉強になった気がする。

良い文章には、良いリズムがある。読んでいて、とにかく心地良い。

そう思っていたから、「文章はリズムで決まる」と明言した前述の本が、ぼくは気になった。

著者の古賀史健さんは、24歳でフリーになって以来、数多くの書籍のライティングを担当されてきた大ベテラン。ご自身の経験から学んできた「書く技術」を、この本にたっぷりと詰め込んでくださった。

とにかく読みやすく、わかりやすく、おもしろい。そして、ためになる。

「書くことは、頭の中のグルグルを『翻訳』すること」

「美文より正文を」

「人は『眼』で文章を読んでいる」

「文章の面白さは、『構成』から生まれる」

「文章の秘訣は、自分事にさせること」

「人は『正しさ』だけでは動かない」

「『ムダな回り道』が読者の納得を生む」

などなど。挙げればキリがないが、これらのビシッとした簡潔な言葉に、とてもスッキリした。

ぼくもライターとして、同様のことを漠然と感じながら書いてはいたけれど、誰かに「書く技術」として伝えることはできなかった。ぼくにとって「感覚」だったものを、ここまで的確に言語化された人物には初めて出会った。

試し読みのつもりが、気付いたら全部読んでしまっていた。これは書くことに携わる全ての人に勧めたい名著だ。とくに、「文章を書くのが苦手」と感じている人におすすめしたい。巷に溢れる文章術の本とは、一線を画している。

20歳の自分に受けさせたい文章講義 (星海社新書)
古賀 史健
講談社
売り上げランキング: 6,036

 

どうして4年前に読んだ本を、今になって紹介しているかというと、また無性にこの本が読みたくなって、先日買ってしまったからだ。そして、昨日一気に再読して、やっぱり素晴らしい本だと思った。

ちなみに、ぼくがこの本に出会ってから少し後、『嫌われる勇気』という本が出版され、古賀さんは一躍、多くの人に知されるライターとなった。

嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え
岸見 一郎 古賀 史健
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 66

-文章術, 読んでみた
-

執筆者:

関連記事

夜9時を過ぎたらタクシーで帰る? 中山マコトさんが唱える「逆説」の思考法

2001年に独立されて以来、フリーの広告・販促プランナーやコピーライターとして活躍されている中山マコトさんは、安月給だったサラリーマン時代から、夜9時を過ぎたら自腹を切ってでもタクシーで帰るようにして …

2019年 読んで良かった本ベスト20

2019年は良質な本やマンガにたくさん出会えた一年でした! とりわけ良かった作品をご紹介します!(順不同です!) 『直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN』 直感と論理をつなぐ思考法 V …

共感を生む書き方のコツは「○○○で書く」こと

Q&Aとは少し違うのですが、昨日こんなメッセージをいただいたので、ご紹介します。 ところで、比較的最近なのですが、中村さんのブログを読んでいる際に偶然「もう一度、人に会いたい」という記事にたどり着いた …

緊急ではないけど、重要なこと

スティーブン・R・コヴィーの『7つの習慣』という本の中に、緊急度と重要度による「時間管理のマトリックス」が登場します。 ・緊急かつ重要なこと(第1領域) ・緊急ではないが、重要なこと(第2領域) ・緊 …

諦めないという「選択」

2010年の西ヨーロッパ一周自転車旅の際に協賛してくださった源奈々さんが、今回の旅でもカンパしてくださった。先ほど感謝を伝えたら、こんな返信をいただいた。 「もう一度こんな日が来るなんてね。それがどん …