2013年の秋、代官山の蔦屋書店で、『20歳の自分に受けさせたい文章講義』という本をたまたま手に取った。
ぼくの職業は、フリーランスのライターである。22歳の頃にハッキリと、「将来は書く仕事をしたい」と思って、それ以来7年間、ブログや雑誌やメディアで書き続けてきた。
しかし、これまで文章術に関する本は、ほとんど読んだことがない。正確に言えば、「最後まで読めた試しがない」。
いくつか手に取ったことはあるのだが、なんだか退屈で、説教くさくて、「おもしろい」と思ったことがなかった。それよりも、司馬遼太郎や村上春樹の小説を読みながら、「この書き出しかっこいいな〜」とか、「なんでこんな比喩が思いつくんだろう・・・」とか、書き手の目線で作品を味わっていた方が、よっぽど書き方の勉強になった気がする。
良い文章には、良いリズムがある。読んでいて、とにかく心地良い。
そう思っていたから、「文章はリズムで決まる」と明言した前述の本が、ぼくは気になった。
著者の古賀史健さんは、24歳でフリーになって以来、数多くの書籍のライティングを担当されてきた大ベテラン。ご自身の経験から学んできた「書く技術」を、この本にたっぷりと詰め込んでくださった。
とにかく読みやすく、わかりやすく、おもしろい。そして、ためになる。
「書くことは、頭の中のグルグルを『翻訳』すること」
「美文より正文を」
「人は『眼』で文章を読んでいる」
「文章の面白さは、『構成』から生まれる」
「文章の秘訣は、自分事にさせること」
「人は『正しさ』だけでは動かない」
「『ムダな回り道』が読者の納得を生む」
などなど。挙げればキリがないが、これらのビシッとした簡潔な言葉に、とてもスッキリした。
ぼくもライターとして、同様のことを漠然と感じながら書いてはいたけれど、誰かに「書く技術」として伝えることはできなかった。ぼくにとって「感覚」だったものを、ここまで的確に言語化された人物には初めて出会った。
試し読みのつもりが、気付いたら全部読んでしまっていた。これは書くことに携わる全ての人に勧めたい名著だ。とくに、「文章を書くのが苦手」と感じている人におすすめしたい。巷に溢れる文章術の本とは、一線を画している。
講談社
売り上げランキング: 6,036
どうして4年前に読んだ本を、今になって紹介しているかというと、また無性にこの本が読みたくなって、先日買ってしまったからだ。そして、昨日一気に再読して、やっぱり素晴らしい本だと思った。
ちなみに、ぼくがこの本に出会ってから少し後、『嫌われる勇気』という本が出版され、古賀さんは一躍、多くの人に知されるライターとなった。
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 66